ミシュラン1ツ星フレンチ「La Paix(ラペ)」のオーナー・松本一平シェフが手がける新業態「Peace(ピース)」。カテゴリとしてはイタリア料理ですが、フレンチや和の要素を融合させた独自の料理が注目を集めています。日本橋室町エリアに位置し、三越前駅から徒歩3分と良い立地です。
店内は高級感とカジュアルさが調和しており、深みのあるダークブラウンの木材がふんだんに使われています(写真は公式ウェブサイトより)。キッチンが客席からよく見えるオープンな造りになっており、調理の音や香り、料理人の動きがダイレクトに伝わり、食事への期待感を高めます。
ワインは「La Paix(ラペ)」のそれを引き継いでいるのか、そのほとんどがフランス産のものでした。1万円前後のボトルが多く、同価格帯でのペアリングなども提案してくれます。
アンティパストミストとして生ハムのブルスケッタ・ワカサギのカルピオーネ・ゼッポリーニ・蟹のジュレとカリフラワーのムース。生ハムの凝縮された旨味と塩気がクリスピーなパンと調和するブルスケッタに続き、南蛮漬け風のワカサギが心地よい酸味で食欲を刺激します。
脂の乗った鯖をメークインと合わせます。鋭角的な酸味が特長的で、鯖特有のオイリーな口当たりを中和します。きめ細やかでねっとりとした甘みを持つジャガイモが、鯖の強い個性を優しく受け止め、酸味・脂・甘みのトライアングルが成立します。
「折戸ナス」を用いたひと品。加熱することでトロリとクリーミーに仕上がり、そこにカラブリア州の唐辛子入りサラミペースト「ンドゥイヤ」を合わせます。刺激的な辛味と豚肉のコクが、ナスの甘みをより一層際立たせ、シラスの軽やかな塩気が味覚のロードバランサ―として機能します。
シャラティエッリに香箱蟹と白子を合わせました。ナポリ発祥の太麺であり、うどんにも似た強いコシとモチモチ感が、重厚なソースをしっかりと受け止めます。ベースとなるチャウダーソースは、蟹の外子や内子、味噌から溶け出した濃厚なコクが支配的で、そこにクリーミーな白子が溶け込み、痛風鍋ならぬ「痛風パスタ」とも言える背徳的な旨味に満ちています。
パンからは天然酵母由来のふくよかで少し酸味を帯びた香りが感じられ、料理のソースを拭う脇役としてだけでなく、単体でも噛み締めがいのあるパンです。口の中をリセットしつつ、食事全体の満足度を底上げしてくれるような、力強くも優しい存在感があります。
スミイカに蓮根まんじゅう。パツンと弾けるような歯切れの良さと上品な甘みを持つスミイカ。そのクリアな味わいに対し、蓮根まんじゅう特有のねっとり、もっちりとした粘性のある食感がコントラストを生み出します。蓮根の土っぽい風味と甘みが、イカの淡白な旨味に深みを与え、噛みしめるごとに異なるテクスチャーが口の中で混ざり合います。
香箱蟹と白子を再登板。先はソースを纏うパスタでしたが、こちらはお米のひと粒ひと粒に魚介のエキスを吸い込ませた凝縮の料理とアプローチが異なる。同じ食材を使いながらも、テクスチャーと香りの立ち方の違いを楽しむことができる構成です。
メインディッシュは、北海道の冷涼な気候でハーブを食べて育った「十勝ハーブ牛」。肩ロース部位特有の程よい噛み応えがあり、噛むほどに赤身の強い旨味と、ハーブ由来の軽やかで臭みのない脂の甘みが広がります。添えられた肉厚のシイタケはアワビのような弾力があり、牛の旨味との相乗効果が見事です。
コースの締めくくりは林檎のカルツォーネ(包み焼きピザ)。中には甘酸っぱく煮詰められた林檎が顔をのぞかせ、そこに濃厚なミルク感のあるソフトクリームを絡めていただきます。ソフトクリームは塩やオリーブオイルを用いて味変してもOK。
ハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上のコースが15,400円で、ワインを含めると支払いは1人3万円に達しました。イタリアンとしては強気の価格設定ですが、パスタを軸とした王道のスタイルではないため一般的な「イタリアン」を求めて訪れると肩透かしを食うかもしれません。
また、ぽいことを色々と試みてはいますが突き抜けた何かは無く、美味しくはあるものの来週には忘れてしまいそうな料理ばかりなのが気がかりです。価格を正当化するだけの圧倒的なスペシャリテの爆誕が期待されます。おつかれさまでした。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
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イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。
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