東山無垢(ひがしやまむく)/中目黒

2023年7月にオープンした日本料理店で、15,000円(税・サービス料10%別)という価格設定で話題を掻っ攫い、瞬く間に予約困難店への仲間入りを果たした「東山無垢(ひがしやまむく)」。中目黒から歩いて10分ほどの住宅街に位置します。

三島立己シェフは機械メーカーに勤めた後に料理人に転身した変わり種。地元の出雲に加え、代々木や鶴見の日本料理店で経験を積んだ後に独立したそうです。
カウンター8席のみの小さなお店(写真は一休公式ページより)。一斉スタートであり、遅刻者が居たとしても全員が揃うまで待つ方針なので、常に5分前行動を心掛ける私などは相当イラつかされました。正直者が馬鹿を見る世界です。

飲み物につき、お品書きは無く値段は全く不明な上、何としても飲み物で稼いでやろうという気迫を感じます。日本酒のやわらぎですらミネラルウォーターで攻めてくるのはちょっと節操が無いなあ。
まずは新タマネギのすり流し。滋味あふれる味わいで、優しい甘味が魅力的。生のコショウのアクセントも面白い。

ところでシェフは基本的に暖簾の奥の厨房におり、次の料理が完成するまでの間は謎の給仕係が場を回しているのですが、話のつまらない美容師よろしく表面的なトークを繰り広げ続けるので超ダルい。「このお店はどうお知りになりましたか?」「他に良く行くお店はどちらですか?」「どのようなお酒が好きですか」などのテンプレ質問をゲスト全員に次々と投げかけ続けるので、まるで就活のグループ面接のようです。我々は食事を愉しみに来たのであって、事情聴取をされに訪れたわけではありません。

極め付きには「いやあ、まだ飲食業界に入ったばっかしで、皆さんに教えてもらってるところです」と朗らかに宣う。我々は食事を愉しみに来たのであって、素人の子守りをしに訪れたわけではありません。舞台に立ってギャラを貰っている以上はプロなのだから、そのような職業意識の低い発言は控えて頂きたい。眼の前に瓦があれば3枚は割っていたかもしれません。
既に帰りたい気分ですが、こちらのホッキ貝はとても美味しい。山菜もたっぷりでショウガのジュレで全体をまとめるなど洒落てます。
お椀は車海老のしんじょう。車海老の風味が強すぎて繊細なスープがちょっと負けちゃっているように感じました。
金目鯛は炭火で炙ります。皮目はパリっと、身に行くに従って程よくレアであり、味わいのグラデーションが心地よい。ソースはちり酢でサッパリと頂きます。
トラフグの白子も炭火でバリっと炙ります。ラグジュアリーなお餅のようで美味。底には飯蒸しが詰め込まれており、もっちりとした食感が後を引く美味しさです。
サクラマスの照り焼き。中々のビッグサイズでサクラマスの味わいをこれでもかと堪能することができます。
スッポンの唐揚げ。美味しいのですが、思い切りディープフライしておりKFCみが強く下品に感じました。非常に唐突な料理であり、ストーリー性も無くチグハグです。
え?もう終わり?ということでお食事がやって参りました。全ゲスト分をひとつの釜で炊くのですが、各グループごとにシャッターチャンスを設けるために美容師が何度もパカパカ蓋を開けたり閉じたりするので滑稽オブ滑稽。東京はインスタグラムの奴隷である。
何故かカレーも出てきます。普通に美味しいですが謎過ぎる。こんなに脈絡のない料理を不連続に提供するのであれば、いっそのことアラカルトで注文できる割烹料理店にすれば良いのに。一斉スタートのコース一本とする必然性が全く感じられませんでした。
お口直しにイチゴ。「とちあいか」という栃木県のイチゴだそうです。
デザートはミルクのジェラート。濃厚な乳脂肪を軽やかな舌触りに仕上げておりとても美味しい。本日一番のお皿でした。
ヨモギのお茶とコンペイトウでフィニッシュ。以上のコースが15,000円で、酒やら税やらサービス料でお会計はひとりあたり2万数千円。ネット上の口コミでは「コスパが良い」という記述が散見されますが、単に食材の質と量を低めに設定しているだけであり(と言っても充分高い)、わたし的には別に普通じゃねというお気持ちです。

支払金額の多寡や予約の困難さを根拠として褒め称すのは違うと私は思うし、美容師の話は最後の最後までつまらなかった。

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