「麻布十番納涼まつり」はもうオワコン!?地元民が内緒で行くのは東麻布の「かかしまつり」!

「『かかしまつり』行こうよ!」生まれも育ちも麻布十番の女の子よりお誘い。「『麻布十番納涼まつり』は混みすぎだから暫く行ってないけど、『かかしまつり』は毎年必ず行ってるの」
さて『かかしまつり』。例年9月の最終金曜日と土曜日に東麻布商店街で開催される、地域住民が主体となった秋祭りです。
どうしてこんな都心の真ん中で『かかし』なの?と彼女に問うと、「東京タワーのすぐ近くに『飯倉小学校』っていうのがあって、そこの児童たちが『かかし』を制作して披露するコンテストがあったの。そのお祭りなんだよね」飯倉小学校は児童数が減って閉校になっちゃったけど、小さくため息をつきながらパリピなかかしを見つめる彼女。
東麻布商店街の中ほどには特別会場が設営され、現代的なかかしが陳列されています。手前のかかしのテーマは「安室ちゃん」とのこと。これは確実に大人の仕事である。
道路の真ん中に仮説ステージも設けられ、町内会の皆さんが出場できるカラオケ大会が開催中。「ちゃあんと投票とかもあって、優勝者には商品として、お米が1俵とか贈られるんだよ!」俵、という単位がピンと来ず検索してみると、品目によって異なり米・大豆・小麦は60 kg、馬鈴薯や大麦は50 kg、ソバは45 kg、木炭は15kgが1俵とのこと。
ミニステージでは怪しげなショーが。アコーディオンを担いだ男性と全身白タイツでポールダンスを披露する女性。おそらく前衛的な何かなのですが、町内会の子供向けの祭りであることを考えると流石にシュールです。女性の下着が透けまくってて直視できず、演目にも集中できない。
祭りの目玉はなんといっても屋台です。お祭りと言えば反社会的勢力が取り仕切ることが多いですが、こちらはあくまで人民の人民による人民のためのかかし祭り。基本的に近場の飲食店が仮設店舗で良心的な価格で出店しています。
商店街からはかなり離れているのですが、好きなクラフトビアバー、「カミカツ タップルーム」が出店していたので立ち寄ってみる。
やはりお店で飲むより美味しくありません。それでいて400円というのはやや割高。やはり飲み物はグラスが重要なのだ。
コチラはラムチョップやチキン、サルシッチャを調理中。ニンニクのきいた脂の香りに誘われて勢いで購入。
右のガーリックチキンが絶品。適度に水分を保ちつつふっくらとジューシーに仕上がっています。屋台メシとしては最上級のクオリティと言って良いでしょう。
ヘナチョコなカップで飲むよりは缶のまま飲んだほうがマシではないかという仮説に基づき、成城石井でヤッホーブルーイングのものを購入。定価で買って、仮設のベンチで屋台メシと共に飲む。この緩さが堪らない。
飲み始めると止まらない我々。いったん自宅に帰ってマイグラスでも持って来るべきだったかもしれません。

「ドーナッツが無い!」と急に焦り始める彼女。何でもこの祭りで最も人を集めるのが豆腐ドーナッツ屋であり、その価格は20年前から据え置きの1つ60円とのこと。それが事実であれば東麻布の奇跡と言って過言ではないのですが、商店街を何往復しても見つけることができない。
運営本部を訪れ尋ねると、「残念ながら作り手がいなくなり去年から出店していない。2016年が最終出店だった」とのことでした。

「あたしが小学生の頃から十番祭りってちょっと高い印象があったのね。幼心ながら『かかしまつり』はリーズナブルだなって感じてて、中でもそのドーナッツ屋の割安感は際立ってたのに」寂しそうに長いまつげを伏せる彼女。恐らくは費用対効果以上に、琴線に触れる何かがあったのでしょう。
ともあれ、良い祭りでした。昨今の『麻布十番納涼まつり』はワールドカップ時の渋谷スクランブル交差点と大差なく、関係ない奴らが意味もなく騒いでいる印象が年々強まってきていますが、これぞ祭りのあるべき姿というものが『かかしまつり』にはありました。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。