かつて「mondo(モンド)」という名で好評を博したイタリアンレストランが暫くの充電期間を経て、「Siamo noi (シアモ ノイ)」という名でリブランドオープン。店名はイタリア語で「これが私たちだ」という意味を持ち、シェフを始めとするチームの確固たるメッセージを感じます。自由が丘駅から徒歩約10分ほどの静かな住宅街に位置し、人の家の庭に降りていくような面白いアプローチです。
「mondo(モンド)」時代から大改装を経た店内(以上、写真は公式ウェブサイトより)。ライブキッチン形式のカウンター7-8席のみの劇場型で、一斉スタート形式です。しかしながら、けっきょく遅刻者を待って全員揃うまで開始を遅らせるので、10分前行動・時間厳守の私はとても辛い待ち時間を強いられました。遅刻したもん勝ちの世界です。
アルコールのペアリングは1万円で、ワイン主体に日本酒やビールも加わります。ワインリストも確認しましたが、その殆どがイタリア産のものでした。
アペリティーボ。キノコなどを練り込んだ薄いフォカッチャにバッカラ(干し鱈のペースト)、ニョッコフリット。それぞれ塩気がきいて酒が進む気がするのですが、入店からコチラが出てくるまで私は事実上30分近く待たされているので、そんな気分の中で食べる料理の味など中くらいです。そもそも遅刻者の存在を前提とした、弾力的なツマミの運用にすれば良いだけだと思うのだけれど。
ヒラメのタルタルをインサラータ・ディ・リゾ(冷製のお米のサラダ)と合わせます。ヒラメは神経締めによって弾力と甘みが上手く引き出されており、超絶お洒落な海鮮丼へと昇華しています。
イカスミの漆黒とジャガイモの純白のコントラストが面白いひと皿。イカスミにはイカ、ジャガイモにはチョロギも含まれており、ねっとりとしたイカとチョロギのシャキッとした小気味よい食感が鮮烈なリズムを刻みます。
パンも自家製でホエーなどを練り込んでいるようです。塩まで自家製(?)なのが面白く、こういった脇役陣にまでシェフの拘りが詰まっています。
クロシビカマス。初めて聞くお魚ですが独特の力強い旨味があり、乳酸菌発酵させた麹のソースが持つ柔らかな酸味にベストマッチ。添えられたノビルが野生味あふれる苦味や爽やかな香りを添えており、複雑で奥行きのある味わいを生み出しています。
V.V.L.(ヴェルドゥーラ・ヴァポーレ・ロンバータ)は時間をかけて蒸し上げられた蕪が主役。その土台に猪とヒグマという力強い旨味が重なりますが、自家製のコンブチャポン酢が持つ発酵の酸味が野生のエネルギーをエレガントに調律しています。
トルテローネ・イン・ブロード。極薄の生地に包まれたのはイバラガニモドキというカニであり、その強烈な旨味が支配的なひと品。繊細な生地の舌触りを含め、どこか中国料理の点心を思わせる味覚であり、あと2-3皿おかわりしたいくらいです。
ラザーニャ。生地は薄くこれがラザーニャかと驚く軽やかな口当たり。チーズやベシャメルなどは足柄の「薫る野牧場」のミルクを用いているそうで、なるほど芳醇なコクが重なり力強くもピュアな味わいです。
メインディッシュを前にライブ感あふれる演出とともに供される氷菓。旬の柑橘と液体窒素を混ぜ合わせ、極細粒の滑らかなシャーベットへと姿を変えます。超低温で閉じ込められた果実のフレッシュな酸味と香りがこれまでの濃厚な余韻を鮮やかにリセットしてくれました。
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メインは精肉界の巨匠「サカエヤ」が熟成・手当を施した「あか牛」。サーロインとは思えないほど赤身の旨味がその存在を主張しており、脂の重さは微塵もなく、噛むたびに溢れる肉汁はどこまでもピュア。黒文字のウッディで清涼感のある香りが和のハーブよろしく肉の野生味を気高く昇華させているのも洒落ています。
デザートはシュトゥルーデルを再構築したひと品。じっくりと熱を入れた紅玉りんごの中にサクサク食感のパイ生地(?)を詰め込みます。添えられた酒粕アイスの仄かな発酵の香りとコクがりんごの酸味をまろやかに包み込み、また、お庭で採れたシナモンの葉が放つフレッシュで青い香りが全体をまとめ上げます。
カンノーロとハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。料理はもちろん内外装含め「mondo(モンド)」とは全くスタイルが異なり、完全に別のレストランと捉えたほうが良いでしょう。いずれの料理も主張があって、かつ、きちんと美味しいのが良いですね。強い哲学を抱きつつも説教臭くならないバランス感覚もお見事。
冒頭のスーパーロング・ウェイティング・タイムさえ無ければもっと気持ちよく食事を楽しめたのになあと思うとただただ残念。ヒトの味覚とは精神状態に大きく左右されることを再認識した夜でした。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
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イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。


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