プチョンユッケ(부촌육회)/広蔵市場(ソウル)

ソウルに広蔵市場というB級グルメが集結するワイガヤ空間があるのですが、その市場にある「ユッケ通り」で一番の行列を作るのが「プチョンユッケ(부촌육회)」。私は日曜日のランチタイムに訪れましたが30人を超える行列です。
かなり込み入った路地にあり地図アプリの利用は必須ですが、韓国では安全保障上の関係(?)でグーグルマップが使い物にならないので、日本語対応の韓国地図アプリ「Naver Map」をインストールしておくと良いでしょう。
30人を超える行列と書きましたが回転は非常に速く、実質15分ほどしか待ちませんでした。メニューをグーグルレンズで和訳したりネット上の口コミを予習しているだけで、あっという間に席へと案内されます。韓国がコロナから開国して日が浅かったためかゲストのうち外国人は我々だけでした。
ビールは大ビンが500円程度と良心的。お水は店内中央のウォーターサーバーからセルフサービスで用意します。地元の方はチャミスル(焼酎)飲んでる率が高かった。
注文してものの数分で料理が全て到着。テーブルじゅうが生モノで埋め尽くされる快感。「海外で生モノなんて!」と怖がる方も多いですが、当店はミシュランガイドへ毎年掲載されるお店でもあり、そのあたりの衛生管理はちゃんとやってると思います。そもそも生肉に係る規制が厳しい国なんて日本ぐらいなのだけれども。
着席すれば自動的に供される大根のスープ。見た目は地味ですが深みがある味わいで実に旨い。瞬で食べ切ると店のオバチャンがやってきて、身振り手振りで美味しいと伝えると、もう1杯お持ちいただけました。なるほどお代わりは無料のようです。
こちらはテナガダコの刺身。刺身というか、ついさっきまで水槽で暮らしていたタコを引き上げて、そのままぶつ切りにした代物です。見た目はグロですが味は良く、歯茎に吸盤がへばりつく感覚も唯一無二の体験です。
絵的にかなりショッキングなので動画も載せておきましょう。当サイトの短くない歴史において動画がアップされるのは今回が2度目であり(初回はNEWSの「Happy Birthday」)、つまりそれぐらい印象的なひと皿でした。
真打登場、ユッケです。フランスにおけるタルタルステーキもかくやという爆盛りサイズであり、普通の日本人が摂取するユッケの総量10年分ぐらいあります。これで2千円ほど。日本の合法ユッケの価格設定が馬鹿らしくなる費用対効果の良さです。
レバ刺とセンマイ刺しの盛り合わせ。こちらは1,500円程度。レバーについては価格設定からは考えられないほどの品質の高さ。他方、センマイは妙に水っぽくビタビタした食感で私の口には合いませんでした。レバーのみ単品で注文できないのが残念。
さんざん食べてお会計はひとりあたり3千円ほど。しかしこれは本当にさんざん食べた結果であり、普通の飲食量であればもっと安くつくかもしれません。なんせユッケがたっぷり乗ったビビンバは千円かそこらの店である。

日本の生食政策はガラパゴス化が進んでおり、このままだと「ユッケ食べにソウル行かない?」という誘い文句が現実化する日もそう遠くないでしょう。ユッケに係る規制を過度に厳しくして誰が救われるのかを深く考えた一日でした。

ちなみに此処から徒歩数歩の「兄弟ユッケ 本店(형제육회 본점)」は朝から晩まで通し営業で空いているので、弾丸ツアーを組む際にはそちらもオススメです。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。