すし寛(すしかん)/西成(大阪)

「居酒屋で覚醒剤を売るな!」がスローガンの街、西成。大阪が誇るハードボイルドタウンであり、「日本三大ドヤ街」のうちのひとつです(もう2つは東京の山谷と横浜の寿町)。
その危険地帯の、ひたすらスナックが続く商店街の中にある「すし寛(すしかん)」。西成では異例を通り越して異常とも言える人気の鮨屋であり、素人は16:00オープンの数十分前から並ばないと入れません。
店内はL字型のカウンター席にお座敷が2卓。ネタケースには高級魚がズラリと並び、生け簀の中には伊勢海老や鱧などが元気に泳いでいます。常連客が多く、どういうシステムなのかはよくわからないのですが、行列するのに予約で訪れているゲストも何組か見かけました。
飲み物は安く、日本酒の「真澄」や「貴」などは1合600円。レアな「勝駒」などの用意もあり、1合900円での提供と気前が良い。また、ハイボールが新メニューという扱いなのは時空が歪んでいる気がします。
酢だこ。極太でムッチムチしたやつをぶつ切りで頂きます。酢の酸を跳ね返すほどの力強さであり、量も多く食べ応えがあります。
貝柱の塩焼き。「今日はホタテになるんですけど、いいですかね?」とのお伺いがあり、望むところです。清澄な味わいで程よく旨味の乗ったホタテを香ばしく焼き上げ、軽めの日本酒にピッタリです。
お造りは5種盛りで頂きました。どうみても5種以上があり、これで2,500円とは西成の奇跡と言えるでしょう。やはり当店はマルチバースか何かなのかもしれません。味はご覧の通りのハイ・クオリティであり、とりわけ白身魚(?)と剣先イカが素晴らしかった。
岩ガキは子供の手のひらほどのサイズ感があり、4-5ほどにカットされていてもまだまだ大きい。ザラっとした旨味にたっぷりの薬味、酢の心地よい爽快感。銃刀法違反と言って差し支えのない鋭い味わいでした。
名物の玉子焼きをツマミで頂きます。ツメ(?)もたっぷり塗ってくれ、酒の進む玉子です。サイズも大きく、腹に溜まるひと皿です。
サンマの箱寿司。関西の寿司は箱に詰めてギュギュギュと固める寿司が多い。サンマは目の前で〆るところからはじまり、脂もたっぷりで背反的な舌ざわりを楽しむことができます。
お会計をお願いすると、オマケでシャインマスカットをお出し頂けました。先のホタテにせよシャインマスカットにせよ、時流に乗った仕入れが上手い気がします。

以上を食べて結構飲んでお会計は9千円ほど。魚介類の質および量を考えれば大変にお値打ちであり、近所にあれば毎日でも通いたいほどです。
他方、費用対効果だけを求めて訪れるにはあまりにハードルの高い危険地帯です。メンタルの強いメンヘラがゾンビのようにそのへんを徘徊しておりナチュラルに絡んで来るので、女の子だけでこの街を訪れるのは控えたほうが良いでしょう。何か事件に巻き込まれたとしても、「そらしゃあないわ」で済まされる気がします。少なくとも私はそう思っています。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。