ソフィア・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション(Lost in Translation)」の舞台であり、東京を代表するラグジュアリーホテル「パーク ハイアット 東京(Park Hyatt Tokyo)」。開業から30周年という節目を迎え、2024年5月から実施された19ヵ月におよぶ全館改修工事が完了し、いよいよ再始動。丹下健三が設計した新宿パークタワーの39階から52階に位置します(画像は一休公式ページより)。
リニューアルでは、オリジナルのデザイナーであるジョン・モーフォードの世界観を継承しつつ、パリ拠点のデザイン事務所「ジュアン・マンク」が監修したとの情報を得ているのですが、あれ?ロビーフロアに入ってすぐの「ピークラウンジ」は何も変わって無くない?
レセプションに向かう通路に並べられた象徴的な本棚の配置も殆ど変わっていない気がする。なんでも、今回のリニューアルは構造レベルでの刷新が主目的だったそうで、壁(断熱・防音)、床、照明、、配管、空調システムを中心にアップデートされたようです。目に見える箇所はオリジナルのデザインを継承するという目に見えない贅沢。
お部屋は新設された「パーク スイート キング」にご案内頂きました。広さは約85平米で、ベージュやソフトグレーを基調としたインテリア。わざとらしくないラグジュアリーが印象的です。真新しいリビングルームなはずなのに、どこか意図された使用感があって落ち着きます。
ミニバーは世界トップクラスに充実しているのですが、ミネラルウォーターとネスプレッソ
、お茶類を除いて全て有料です。また、他のパーク ハイアットと同様にエグゼクティブラウンジの用意もないので、このあたりタダ酒命な方には減点ポイントかもしれません。
こちらはベッドルーム。頑張れば8人ぐらい眠れそうな特大サイズであり、もちろん寝心地も二重丸。65インチのフラットテレビにつき、リビングルーム側にもベッドルーム側にも用意されており、いずれもキャスト可能なスマートテレビです。
窓からの眺望。遠くに高層ビル群は見えるのですが、眼下には代々木公園が広がっており、スカイスクレーパー感は控えめです。前回お邪魔した際のお部屋のほうが東京っぽさが際立った眺望でした。

ウォークインクローゼットだけでスーパーホテルの客室ぐらいの広さがあります。バカっとスーツケースを広げても全然余裕。ハンガー類もドッシリと重量感があって豊かさが感じられます。奥には化粧台まで独立して用意されています。
ウェットエリアに参りましょう。ベイシンは当然にふたつ用意されており、その上で色んなものを置くスペースも豊富で使い勝手抜群。バスアメニティにつき、パークハイアットは全てルラボで統一されていると思いきや、当店は昔と変わらずイソップのものでした。
バスルームは相変わらずゴッツイ石を採用しており、滑って頭を打ってご臨終は全く考え得るストーリーです。酔っぱらって帰って来た際はお気をつけて。ちなみにバスローブがフレッテのもので気づいたのですが、その他のリネン類も全てフレッテのものを採用しているそうです。
お手洗いは独立型。写真のちらつきが酷いですが、アップデートされたLED照明と私のスマホカメラとの相性が良くないのかもしれません。共用設備に参りましょう。「クラブ オン ザ パーク」と称していますが、要するにジムとプールと大浴場です(画像は一休公式ページより)。プールにつき、前回お邪魔した際はコロナか何かで予約制で時間制限まであったのですが、今回はガラガラの空き空きで快適快適。20メートルという長さは物足りませんが、47階という高さですしおすし。

45階のスパ施設も目に見える部分は殆ど変わっておらず、ローマの歴代の皇帝が利用してきたかのような重厚な誂えは健在です(画像は公式ウェブサイトより)。小さなサウナが何室も用意されており、サウナ―にとっては天国かもしれません。
夕食は外に食べに出て、戻ってきた際にもう少し飲もうということで52階の「ニューヨークバー」へ。チェックインの際に「予約は不可だが宿泊者は優先的に案内するので、まずは内線して欲しい」とのことだったのでそうすると、「10分前の情報で8組待ちだったので、何時に入店できるとは確約できないが、部屋で待っていて欲しい。空き次第連絡する」との回答。
慇懃な対応に少し仰々しさを感じながら待つこと5分。意外にもすぐ呼び出しがかかりました。エレベータを乗り継ぎ意気揚々と店へ向かったのですが、目の前の行列を見て絶句。まさか、これほどの人々が酒を求めて列をなしているとは。ここは赤羽か何かなの?
我々は週末の最も盛り上がる時間帯にお邪魔したようで、ホテルのバーというよりも香港の蘭桂坊(ランカイフォン)のような盛り上がりよう。ジャズの生演奏を楽しむことを含めての行列だったのかもしれません。酒はどのカクテルも1杯税サ込で3千円程度であり、2杯飲んでカバーチャージも含めて1万円ほどで済むというのは悪くないディールです。ちなみに宿泊者はカバーチャージ不要とのことでうれぴっぴ。
朝食はリニューアルに合わせてフランス料理界の巨匠アラン・デュカスとタッグを組んだ「ジランドール by アラン デュカス(Girandole by Alain Ducasse)」へ。なるほどチェックインの際、朝食はどこで摂ろっかなー、部屋が広いならルームサービスにすっかなーと悩んだのですが、担当が「絶対にジランドールがいい。せっかくアラン デュカスと組んだんだ間違いない」と激推ししてくれた理由がよくわかりました。「最高の朝食」を冠するに相応しいのは、間違いなくこの場所です。私が保証します。かけてもいい。 詳細は別記事にて。
ちなみに別の日にお邪魔した日本料理レストランの「梢 (こずえ)」のランチの費用対効果はかなりのもの。そのへんの居酒屋でちょっと飲んだだけでも似たような支払金額に達してしまうことを考えれば大変お値打ち。みんな変な飲み会なんてもうやめて、ホテルのランチを食べに行こう。
結局のところ、「パーク ハイアット 東京」はどこまでも「パーク ハイアット 東京」でした。多額の費用と19ヵ月の歳月を投じながら、目に見える部分を敢えて変えないという選択。この大改装を前に、私の脳裏には難波の名店「一芳亭(いっぽうてい)」の『いらんことせんでいい』という至言が静かにリフレインしていました。
流行を追うのではなく、私たちが愛した物語を守り抜くという目に見えない贅沢と凄まじい度胸。窓辺のデイベッドから眺める景色が以前と変わらずそこにあることに、これほど安堵し、満ち足りた心地になることはありません。新しさを競う時代に、この「変わらなさ」こそが、このホテルが世界に誇る唯一無二の価値なのだと確信した滞在でした。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。
















