沖縄そばの店 しむじょう/首里(那覇市)

那覇ではトップクラスの人気を誇る沖縄そばの店「しむじょう」。住宅街の高台に位置し、ゆいレール「市立病院前駅」から歩いて10分ほどですが、高低差の激しいエリアなので旅行用トランクなど大きな荷物を引いては辿り着けないのでご注意を。駐車場もあるにはあるのですが台数が限られており、狭い道を迷いながらおそるおそる運転する必要があることを覚悟しなければなりません。
1954年築の古民家を改装した店内。靴を脱いで座敷にあがるスタイルであり、掘りごたつ形式でもないため、足を組めない欧米人などは難儀しそうです。テラス席もあって、末吉公園の緑を眺めながら食事を楽しむこともできるようです。
まずは単品メニューとして提供される「てびち」。見た目にも艶やかな豚足の煮込みであり、箸を入れるとすぐに崩れるほど柔らかく煮込まれています。最大の特長はその食感で、ひと口目はプルプルとした皮の弾力を感じさせつつ、口に含むと瞬く間にとろっと溶けていきます。醤油ベースのタレが中までしっかりと染み込んでおり、濃厚なコラーゲンの旨味と甘辛いタレの味わいが一体となっています。
「本ソーキそば」の「セットメニュー」がやってきました。先の「てびち」が350円で、コチラのセットが1,500円、トッピングの「ゆし豆腐」が50円の、総額1,900円です。結論から述べると、質および量を加味すると極めて費用対効果が高いと言えるでしょう。
スープは豚骨とカツオの風味がバランスよく合わさった透明感のあるタイプ。カツオの風味が前面に出た上品な和風出汁がベースでありながら、豚骨からじっくりと煮出して抽出したコクと旨味がしっかりと下支えしています。余分な脂を取り除いているため口当たりはサッパリとしており、雑味がなくクリアな味わい。最後の一滴まで余裕で飲み干します。ゆし豆腐は優しい味わいに仕上がっており、大豆のほのかな甘みと香りが感じられ、綺麗なスープと合わせて食べるにピッタリです。
麺は、沖縄そばとしてはやや細めの平打ち麺。ツルリとした喉越しと適度なコシを併せ持っており、ストレートに近い形状でありながら僅かな縮れがスープによく絡みます。小麦の風味は主張し過ぎることはなく、先の端正なスープと一体的に楽しむことができます。
本ソーキ(スペアリブ)は別皿での提供。骨の周りの肉をしっかりと味わうスタイルで、沖縄そばへのトッピングというよりは肉料理そのもの。甘辛い醤油ベースでシッカリとした濃いめの味付けで、昼からビールが欲しくなります。
セットに付随する「じゅうしい」。こちらは肉類からは一転し、味付けが濃すぎず出汁の風味を活かしたあっさりとした味わいです。パラパラとしっとりの中間のような炊き上がりで、具材の食感も楽しい。
小鉢も色々と付随し、これらをひと皿づつ勿体つけて提供すれば「民芸酒場 おもろ」のようなコース料理になりそうな完成度の高さです。
デザート(?)として「ジーマミー豆腐」も付きます。ピーナッツから作られた沖縄ならではの豆腐であり、プリンやババロアを思わせるモチモチと弾力のある独特の食感が後を引く美味しさ。口に含むと落花生の濃厚な香ばしさとクリーミーでまろやかな甘みが広がります。
美味しかった。那覇市内に旨いそば屋は山ほどありますが、当店は立地や空間づくりを含めてロマンがあり、心電図がハート型になりそう。行列が常態化しつつ売り切れ御免という営業スタイルにハードルの高さはありますが、初めての沖縄旅行であれば何としてもスケジュールに組み込みたいお店として挙げられるでしょう。オススメです。

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