SÉZANNE(セザン)/フォーシーズンズホテル丸の内 東京

客室数が57しかないスモールラグジュアリーホテル「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」。2020年、駅を挟んで反対側に「フォーシーズンズホテル東京大手町」が開業して話題となりましたが、今回はリニューアルしたばかりのメインダイニング「SÉZANNE(セザン)」にお邪魔します(写真は公式ウェブサイトより)。
ビルの入り口からエレベータへの案内、レストランから客席までのエスコートが完璧であり、おー、これぞラグジュアリーホテルと思わず唸るサービスレベルの高さです。

内装は「香港を代表する建築家アンドレ・フーが手掛けた」とのことですが、リニューアル前の「MOTIF」とそんなに変わっていないように感じたのは気のせいかしら。ちなみに店名はシャンパーニュの地名であり、シェフの親族がこの地に別荘を所有していたそうで、軽く上級国民です。
グラスのシャンパーニュは税サ込で4千円弱~とぶっ飛び価格ですが、ボトルであれば18千円強~という価格配置であったため、自然と後者に流れました。まあ、ホテルの酒の値付けとはこういうものである。

ダニエル・カルバート(Daniel Calvert)シェフはイギリス出身。ロンドンで腕を磨いたのち、ニューヨークの「Per Se(パーセ)」、パリの「Epicure(エピキュール)」といった名だたる有名店で経験を積み、香港のビストロ「Belon(ベロン)」でシェフを務めた後、東京へ。客席を見渡せる厨房の窓からかなりしっかりとゲストをチェックしており、同僚とも明るく良く喋り、実に楽しそうに仕事に取り組んでいます。こういうお店は大体アタリである。
ドラゴンフルーツのような物体の正体はダイコン。たっぷりのハーブを身にまとい、カリっとした食感と共に軽快な出だしです。
グジェールには48カ月熟成(!)のコンテをトッピング。グジェールがホカホカに温かくコンテとの境界線がジットリと汗ばみ、芳醇な香りを放ちます。
熱くてドロっとした液体で、マッシュルームのスープと見せかけて長野産の松茸でした。なんて贅沢な。滋味あふれる官能的な味覚であり、スパチュラが欲しいくらいです。
パンはトウモロコシを用いたパン。それほどトウモロコシトウモロコシはしておらず、ほんのりと風味を感じる程度ですが、穀物としての奥行きはしっかりとしており、ボルディエのしっかりとしたバターと良く合います。
キュウリとホースラディッシュのムースっぽいやつに、すすきの「はちきょう」さながらにイクラをぶち込んでいきます。イクラの量につい目が行きがちですが、キュウリをイクラのサイズに小さく丸っこくくり抜いた(?)ものもたっぷりと含まれており、神経症的な美へのこだわりを感じました。
厚岸の牡蠣のタルタル(?)にコシヒカリのリゾット(?)。読み書きが辛うじてできる程度の私の語彙力では説明が難しい料理ですが、美味しいことには間違いありません。オゼイユ(ハーブ)の野性的な風味がウホっとなるアクセント。
フォアグラのタルト。ペースト状のフォアグラの中には鴨のコンフィが組み込まれており、ため息が出るほど美しく、美味しい。添えられた生のアーモンドや紅茶のジャム(?)にも卓抜したセンスが感じられ、オシャレな味わいです。
クネル(さつまあげ)状になったホタテに松茸再登板。見どころはたっぷりのソースであり、フレッシュな酸味と乳のコクが同時多発的に感じられ、鮮やかな味覚のひと皿です。
お肉料理は白糠の鹿肉。ソースは王道のコショウのソース。これまでは少量多皿で才気煥発な料理が続きましたが、ここにきてドーンとクラシックな調理で嬉しくなる。肉もソースもパーフェクトに美味しく、手元に置いていってくれた追いソースまで余すことなく愉しみました。本当に旨かった。
デザートに参ります。まずはお口直し。マイヤーレモンを用いたムース(?)ならびに氷菓なのですが、このひと口がびっくりするほど美味しい。上品な酸味で刺々しいところは全く無く、キレイさっぱり口腔内がリセットされます。
ココナッツのアイスに黒イチジクのコンポート。凝縮感に溢れたイチジクであり、新潟産だと言っていたので「naoto.K(ナオトケイ)」と同じ生産者なのかしら。やはり追いイチジクとして気前よく小鍋ごとイチジクを置いていってくれました。
ここからはミニャルディーズ(小菓子)という位置づけなのですが、ドーム型のパリパリを被ったモンブランが登場と洒落てます。
松の香りが漂う焼きたてのフィナンシェに軽い口当たりのブラウニーで〆。ごちそうさまでした。
以上を食べ、食事だけだと税サ込で1.2万円とラグジュアリーホテルのメインダイニングとしては相当にお値打ち。飲み物は仕方なしに高いですが、それでも酒を含めてひとり2.2万円と総額では納得感のある支払金額でした。

ホテルのメインダイニングは高いだけで全然パっとしないことが多いですが、当店は別格。時代の最先端の先端を行く料理であり、それでいてきちんと美味しい。このあたりのホテルでの食事はパレスホテルの「エステール(ESTERRE)」一択でしたが、今回のランチを通じて選択肢が増えて嬉しい限り。次回はディナーにお邪魔したいと思います。

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