恵比寿三丁目の交差点から白金北里通りに入って数分の所にある「よるのKITCHEN(キッチン)」。旧店名は「夜食屋275」だったようで、夜のニュアンスは外さない方針なのかもしれません。自由度の高いカウンターイタリアン「オステリア エンメ(Osteria M)」のお隣です。
客席が変わっていて、店内中央に鎮座する一枚の大きな木製テーブルがひとつのみ。基本は横並びでカウンターとして使用しますが、補助的に向い合せで着席する仕組みもあります。シェフのワンオペ営業ですが料理のラインナップは豊富であり、また、「お客様がお帰りになるまで」という柔軟な営業時間の設定もクールです。
飲み物は周辺相場に沿っており、500ミリリットルのビールは千円を切り、グラスワインも1杯千円強といったところでした。
穴子・パクチー・クレソンのサラダ。弾力を感じさせる穴子にパクチーの爽やかなハーブ香とクレソンのピリッとした苦味が融合する独創的な味覚。調味に酢が効いており、穴子は甘辛いタレで仕上げつつも酸味は豊かとおいう面白い構成です。
イワシのピサラディエール。南フランス・ニース地方の郷土料理であり、サクサクとした生地を土台にリッチな脂を湛えたイワシをオン。香ばしく焼いたジューシーなイワシが酒を呼びます。
ズワイガニ・カニミソ・カリフラワーのグラタン。ズワイガニの身を贅沢に使用し、濃厚な旨味を持つカニミソをソースに溶け込ませます。甘くてホクホクとした食感のカリフラワーが良く合う。表面に焼き付けられたチーズの香ばしさと、スプーンを入れた瞬間に立ち上るカニの豊かな香りが食欲をそそります。
カラスミとトレビスのパスタ。カラスミの凝縮された塩味と旨味に加え、ほろ苦くシャキシャキとした食感の紫野菜を楽しみます。麺は程よく太く食べ応え抜群。食べながらも食欲が沸いてくる逸品です。
近江鴨のコンフィ。低温の油でじっくりと時間をかけて煮た鴨肉は、皮はパリッと香ばしく肉はシットリと柔らかい。付け合わせのレンコンのシャキシャキした歯ざわりとの対比も心地よく、ビストロの王道ともいえるひと品です。
もう少し食べれそうだったので炭水化物を追加発注。こちらはトマトがベースのパスタであり、旬のカツオとマッシュルームがたっぷり。それぞれの力強い味わいをトマトの酸味と甘みがひとつにまとめ上げます。
以上を食べ、しっかり飲んでお会計はひとりあたり1.5万円ほど。プライベートダイニングのような雰囲気の中、食べたい料理を食べたいだけ注文できる自由度が素晴らしいですね。パンパンに客を詰めることの無い余裕のある運用設計であり、静かで親密な食事に最適。小体な店だし、次回は貸切で利用してみようかな。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- 三和(さんわ)/白金台 ←直球勝負で分かり易く美味しい。
- merachi (メラキ)/西麻布 ←質実剛健ながら日本的な繊細な感性も感じられる。
- Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目 ←お魚料理のひとつの究極系。
- ヴィンチェロ(Vincero)/新宿御苑 ←どのような大食漢が訪れたとしても満足すること間違いなし。
- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜) ←何でもアリの旨いもの屋。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。









