店内はカウンターと小さなテーブル席がいくつか、それに小上がりという小体な造り。常連客が多く、大人の落ち着きを放っています。店主と女将さんの物腰は柔らく、気軽に話しかけてきてくれます。ちなみに器は常滑を代表する陶芸作家、吉川正道・千香子夫妻の作品を用いているそうです。
生ビールは490円と安い。サーバーもきちんとメンテナンスされており、ラグジュアリーホテルであれば1,480円ぐらいは請求されそうな質および量です。その他の酒類も良心的な価格設定で、グループであればワインをボトルで楽しむのも良いでしょう。
まずはお通し。牛タンとレンコンの煮込みでしょうか。ホクホクとしたレンコンに牛タンの旨味がしっかりと沁み渡り、これから始まる怒涛の牛タン料理への期待が高まります。牛タンのカルパッチョ。牛タンに粉チーズがふりかけられているという斬新なアプローチです。旨味を前面に押し出した調味であり、しっかりと水にさらされ辛味を抜かれた玉ねぎがシャキシャキと小気味良く、見事な調和を見せています。
牛タンとブロッコリーのサラダ。濃厚な肉料理が続く中でのオアシスです。ブロッコリーの食感とマヨネーズの仄かな酸味が、次なる牛タンへの食欲を再点火してくれます。王道の塩焼き。サクッと心地よい歯切れの良さと、噛み締めるほどに溢れ出す肉汁が印象的。厚みがあるのに柔らかく、思い切りの良い調味と共にビールが進むのなんのって。
煮込み。一見すると味噌汁のようですが、中には牛タンがゴロゴロと組み込まれており食べ応え抜群。牛タンのエキスも凝縮されており、白ゴハンが欲しくなる旨さです。
牛タンの揚げ出し豆腐。これまた牛タンの新たな可能性を探るひと品で、出汁の旨味と揚げた牛タンのコクが意外なほどの親和性を見せ、思わず日本酒が欲しくなる味覚です。女将さんに勧められて注文した牛タンのコロッケ。サクサクの衣の中にジャガイモと牛タンのミンチ肉(?)が組み込まれており、専門店ならではの矜持が感じられる味わい。コロッケに牛タンを用いるとは、ありそうでない試みです。
〆に牛タンのストロガノフ。たっぷりの牛タンが特製のデミグラスソースで長時間煮込まれており、肉の繊維一本一本にまでソースが染み込んでいます。そこらの気取った洋食店が裸足で逃げ出すほどの圧倒的なコクと深みが感じられ、これは赤ワインが欲しくなる。
サービスで杏仁豆腐もお出し頂けました。程よく紅茶の香りがきいており、心身ともに牛タンの濃厚な余韻をカットしてくれます。
以上の料理を2人でシェアし、軽く飲んでお会計はひとりあたり4-5千円といったところ。都心の何でもない牛タン焼き定食が2-3千円することを考えると実にお値打ち。加えて牛タンという単一の食材で、ここまで変幻自在に多彩な表現ができるのかとただただ感服。次回はグループで小上がり席を陣取って宴会を催したいと思います。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。












