「La Gloire (ラグロワ)」での食事が暗すぎて滅だったので、お口直しに神楽坂の「フロレゾン(Floraison)」へ。過去にミシュラン1ツ星を獲得しており、食べログでは百名店に選出されています。
店内はインダストリアルな雰囲気でスタイリッシュ(写真は食べログ公式ページより)。厨房に面したカウンター席とテーブル席があり、おひとりさまから大人数のグループまで上手く使い分けれそうです。
新たに厨房を預かる佐藤貢平シェフは六本木の「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」や「カンテサンス」で腕を磨いてきました。
ワインは全て佐々木利雄オーナーソムリエにお任せしましょう。フランス各地の銘酒を料理をピタリと合わせてくれ、量もたっぷり値段も手頃。フランスワインひいてはフランス料理に文化に対する深い愛情と敬意がビンビンに伝わって来ます。
アミューズのビジュからしてキリッとしています。温かなグジェール(?)からはラクレットチーズの濃厚なコクと香ばしさが溢れ出し、シャンパーニュを誘います。続く馬肉のタルタルは、キャビアの硬質な塩気が赤身の澄んだ旨味を研ぎ澄ませ、官能的な舌触りへと導きます。締めくくりはタラの芽のフリット。春特有のほろ苦さが、薄衣の中で蒸らされた瑞々しい香りと共に弾け、山菜の生命力をダイレクトに伝えます。
ねっとりと甘いアオリイカの質感を主役に、緑の香りを多層的に重ねた爽快なひと皿。ピスタチオの香ばしくまろやかな脂質がイカの甘みを優しく包み込みつつ、春菊特有の清涼感ある苦味が後味を整理します。レモンのシャープな酸味と華やかなアロマも良く合います。
フォアグラは緻密な構成力が光るガトー仕立てで。雑味を削ぎ落としたクリーミーで濃密な口溶けにブラッドオレンジの力強い酸味と特有の苦みが重なることで、フォアグラの脂の甘美さがより一層際立ちます。土台となる生地のサクサク感も心地よく、ここ数年で食べたフォアグラ料理の中でもトップクラスの完成度です。
モリーユ茸には旨味の濃いホロホロ鳥を詰め、そのエキスを茸に吸わせることで風味を高めています。ソースはジュラの銘酒を用いたヴァンジョーヌ。程よいの酸化熟成香が、茸の土っぽい香りと共鳴し、全体に奥行きを与えます。旬のタケノコのサクッとした歯触りもリズミカルで、クラシックな重厚さと季節の軽やかさが見事に共存しています。
お魚料理はシロアマダイ。皮目はパリッと香ばしく、身は水分を湛えてしっとりと仕上げられています。中心部がわずかにレアな状態を保ちながらも熱はきちんと入っているという理想的な状態。藁のの燻煙香も組み込んでおり、白身の繊細な甘みを引き立てつつ、フキノトウの力強い苦味と野生的なトランペット茸の香りと見事に呼応しています。ソースは白ワインをベースとしたクラシカルなものであり、魚料理の完成形のひとつと言えるでしょう。
メインはランド産ピジョン(鳩)。鳩の血と内臓のコクが凝縮されており、力強く、野性味溢れる官能的な味わい。一方で、鳩の肉自体は非常にエレガントに焼き上げられており、鉄分を含んだ濃い旨味が噛み締めるほどに溢れます。伝統的なフランス料理に対する深い敬意と現代的な精密な火入れが融合した、クライマックスに相応しい重厚かつ洗練された逸品です。
清涼感とスパイスの刺激で鮮やかに彩るモダンなデザート。ヴァシュランを基本としたもので、キウイとライムの鮮烈な酸味をベースに、生姜のピリッとした辛みも効かせています。そこにシャルトリューズの複雑なハーブ香が加わることで、単なるフルーツデザートではない、奥行きのある大人な味わいへと昇華されています。
小菓子にも手がかかっており、八女和紅茶と共にニコニコしながらフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が17,500円で、ワインのペアリングも含めて3万円でお釣りが来ました。料理やワインの質と量を考えれば信じがたい費用対効果の高さであり、控えめに言って神席です。
前任シェフ時代に獲得した1ツ星の重圧をはねのけ、佐藤貢平シェフ独自のスタイルが既に確立しているのもいいですね。モダンで華やかな構成でありつつ味わいは伝統的なフランス料理の枠組みを厳格に尊重。近々ミシュランの星の獲得は確実。かけてもいい。新生フロレゾンは新進気鋭の若きシェフを得たことで、かつてないほど鮮やかな「開花」の時を迎えています。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
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- ガストロノミー ジョエル・ロブション (Joel Robuchon) ←やはり完璧。
- La couleur d'ete(ラ クルール デテ) ←選んだ孤独は良い孤独。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- フランス料理研究室 アンフィクレス (AMPHYCLES) ←古典フランス料理の愛好家にとっての最終目的地。
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- エルヴェ(eleve) ←アラカルトでもコースでも自由自在。
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