今年も上海蟹(大閘蟹)の季節がやってきました。10月末から11月初旬にかけては旬がメスからオスへとバトンタッチされる時期であり、そのタイミングで中国を訪れると両方楽しむことができるという神回です。
お店は尖沙咀(Tsim Sha Tsui)のハーバーシティ内にある上海料理専門のファインダイニング「个園竹語(Gold Garden Shanghai Cuisine)」に予約を入れました。軒先には上海蟹(大閘蟹)をこれでもかというほど並べています。
ラグジュアリーホテルのダイニングの超高級店というわけではないのですが、店内はシックでエレガントな雰囲気。ショッピングモール内にあるとは思えない静かでプライベートな雰囲気を醸し出しています。なお、私が見た限りは全ての座席が個室もしくはボックスシートでした。
香港では食事中にそれほど酒を飲まないので、ポットのジャスミン茶をお願いしました。我々だけでなく、他のゲストも殆どがそうしています。スレッズ上で「お酒を注文しない客はゴミだ!」と発狂している日本の飲食店経営者たちは香港に来たら何を感じるのだろう。
ツイート
関連記事
それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたい方へ捧ぐ書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。ある意味では中国旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。
まずは当店のシグネチャーである冷前菜4種を盛り合わせ。上海ガニのコースなのに普通にアワビの紹興酒漬けが出てくるのが恐ろしい子。前言撤回して酒を注文する勢いです。スモークした半熟卵は日本の味玉文化とはまた違った魅力があります。
上海蟹の蟹味噌入りフカヒレ煮込み。濃厚な蟹味噌と身をこれでもかというほどぶちこんで、フカヒレと共にとろみがつくまで煮込んでいます。フカヒレの滑らかな食感と上海蟹の濃厚な旨味と香りが一体となり、実にけしからん味覚です。旨い、旨すぎる。
おや、エビも出てきました。プリプリとした食感の大きな海老を翡翠に見立てた緑鮮やかな野菜を炒め合わせ、濃厚な上海蟹の蟹味噌と身をソースと共に頂きます。ひと口食べれば、海老の甘みと蟹味噌のコクが舌の上で溶け合い、脳天を突き抜けるような幸福感に包まれます。
主役の上海蟹(大閘蟹)。重さが六両(約225グラム)のブツを丸ごと姿のまま蒸し上げました。セルフで専用のハサミを手に取り熱い甲羅と格闘。硬い脚を切り離し、関節を割り、細い道具で慎重に身を掻き出す。その作業はまるで宝探しのように夢中になれる楽しさがあります。クライマックスは甲羅を剥がす瞬間で、内側に潜む黄金色に輝く濃厚な蟹味噌に、わたし絶頂に達しました。
スモークした魚とお芋のお餅を共に頂きます。日本人には表現できない何とも複雑な味覚。ただ、先の蒸した上海蟹のカニ味噌の旨さが衝撃的すぎて、控えめな印象です。順序って大事やな。
続いて上海蟹の蟹味噌入り小籠包。薄い皮をそっと破るとオレンジ色に輝くスープがレンゲ一杯に溢れ出します。
中には上海蟹の身と味噌がこれでもかというほど詰まっており、凝縮された蟹の旨味が津波のように押し寄せ、その芳醇な香りに陶然となる。まさに上海蟹そのものを味わう至福のひと粒です。こちらは魚の浮袋と大根の煮込み。魚の浮袋はプルプルトロリとした口当たりで、豚足のようなコラーゲンを感じます。ただ、主役は実は大根で、天下一品の「こってり」を限界まで煮詰めたような風味が沁みており、記憶に残る味覚です。
デザートは黒ゴマ団子と生姜のスープ。もち米で作った団子に甘い黒ゴマの餡が入っており、この団子を甘く煮出した生姜のスープに浮かべています。思いのほか生姜の風味が強く喉が良くなりそう。キンモクセイの花を散らしているのもオシャレです。
以上の上海ガニコースが598香港ドルで、2025年10月のレートだと約12,000円といったところであり、安い、安すぎる。東京で食べれば3-4万円は請求される質および量であり、やはり名物というものは、それを得意とする土地で食べるべきだと再認識した食事でした。もちろん香港できちんとした鮨を食べれば4-5万円は当たり前なので、このあたりはおあいこです。
関連記事
それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
- チャイナハウス龍口酒家(ロンコウチュウチャ)/幡ケ谷 ←東京の10,000円以下の中華だとダントツ好き
- 中華銘菜?陽(センヨウ)/東高円寺 ←率直に美味しくアラカルト可なのが嬉しい
- サエキ飯店/目黒 ←切れ味抜群
- ShinoiS(シノワ)/白金台 ←めちゃ美味しいんだけれど高いんだよなあ
- 4000 Chinese Restaurant/西麻布 ←王道中の王道の中華料理ですげえ旨い
- センス(Sense)/日本橋 ←あれだけ香港に通い詰めた結果、日本の飲茶が一番とは実に複雑な心境
- 南方中華料理 南三(みなみ)/四ツ谷 ←素晴らしい、何も言うことは無い
- 蓮香(レンシャン)/白金高輪 ←日本人が一般に想像する中華料理のイメージを打破する多彩な魅力
- 中華バル 池湖(いけこ)/渋谷 ←度を越した費用対効果
- 紫玉蘭/麻布十番 ←税込800円は神のなせる業
- VELROSIER (ベルロオジエ)/河原町(京都) ←フランス料理みたい
- 開化亭(かいかてい)/岐阜駅 ←過剰なものは何も無く、足りないものも何も無い
- Mott 32(卅二公館)/中環(香港) ←この中華料理はちょっと東京には無い
- Lung King Heen(龍景軒)/中環(香港) ←総合力という意味では香港における飲茶で私的ナンバーワン













