東別院の駅を出てすぐの場所にあるフランス料理店「Reconnaissance(ルコネッサンス)」。食べログでは百名店に選出。店名はフランス語で「感謝の気持ち」を意味します。
店内は茶色を基調とした内装でバーカウンターと少数のテーブル席で構成されています。中央に樹木が掲げられており、威圧的なフォーマルさとは無縁のナチュラルな雰囲気。
安形元晴シェフは広尾の「ひらまつ」でそのキャリアをスタートさせ、フランスでは「メゾン・ド・ラ・ロゼール」で研鑚を重ねました。帰国後は軽井沢の「エルミタージュ・ドゥ・タムラ」で腕を磨き、2013年に当店を開業。
アルコールの値付けは良心的で、シャンパーニュは2千円、グラスワインは千円強~といったところ。ワイン3杯セットの使い勝手が良く、また、面白いところでは日本酒の飲み比べなども用意されていました。
フォアグラのフランで開宴。丁寧に裏ごしされたフォアグラは舌の上でとろけるほど滑らかな食感を生み出します。その濃厚な味わいに芳醇なトリュフの香りが華やかに重なり、アミューズながらも深い満足感を得られるひと品です。
旬の秋刀魚をスモークし、その香ばしい風味を最大限に引き出します。凝縮された秋刀魚の旨味と完熟した黒いちじくの自然で優しい甘みがよく合う。果実のプチプチとした食感も楽しく、秋の訪れを感じさせてくれるひと皿です。
パンは鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」を使い、ゲスト一人ひとりのために個別に焼き上げます。外はカリッと香ばしく、中はシットリとした口当たり。穀物の甘味が光ります。
ツブ貝にウニ。貝のコリコリとした食感が心地よく、ウニのリッチな甘味が重なり問答無用の美味しさです。ソースには酒粕を用いており、発酵由来の旨味とコクが面白い。独特のぬめりとほのかな苦味を持つツルムラサキを用いてのアクセントもお洒落です。
オマール海老をレタスで包みました。オマール海老の美味しさは当然として、プリプリとシャキシャキの食感の対比が良いですね。甲殻類の旨味が凝縮された濃厚なソースアメリケーヌがオマール海老の甘みを一層引き立て、更にはマコモダケやセップ茸が加わることで、複雑で豊かな秋の風味が広がります。
エゾアワビと松茸を贅沢に組み合わせた、秋の味覚の集大成とも言える逸品。ほろ苦く濃厚なアワビの肝を使ったソースが全体の味を引き締め、万願寺唐辛子の優しい甘みがアクセントを加えます。どこか和のニュアンスすら感じられるのも興味深い。
お魚料理は甘鯛。皮目をパリッと香ばしく焼き上げ、黒舞茸も寄り添います。ソースには岩海苔を用いており磯の香りが豊か。日本料理のニュアンスがより強まって参りました。
メインは佐賀牛。ダラダラと脂っこくは無く、肉本来の旨味がしっかりと感じられるスタイルです。香り豊かなゴボウとシイタケがその味わいを一層引き立て、赤ワインを用いたソースは牛の赤身との相性抜群だ。
〆のお食事にキノコの炊き込みご飯がやってきました。当然に美味しいのですが、どうして炊き込みご飯なんだろう。味は良いもののコースに加える必然性が感じられませんでした。
また、「あの炊き込みご飯の意図とは?」と思い悩んでしまったため、デザートの「秋パフェ」の写真を撮り忘れてしまいました。シャンパングラスに美しく盛り付けられた秋の味覚が詰まったかわちいパフェなのに記録に残せず残念。カシスの酸味、洋梨の芳醇な香り、黒糖アイスのコクのある甘み。それにフレッシュなイチヂクが加わることで、見た目も華やかに、最後まで飽きさせない構成のデザートでした。
食後にお茶を楽しんでごちそうさまでした。以上のコースを味わい、ワインもしっかり楽しんでお会計はひとりあたり2万円弱。料理の質および量を考えれば見事な費用対効果であり、フランス料理っていいな、日本の四季っていいなと再認識させてくれるディナーでした。
和のエッセンスの積極的な導入も興味深く、肩肘張らず普通の日本人がきちんと美味しいと感じられる料理の数々。日本ワインでのペアリングの用意もあるそうで、次回はそちらを試してみたいと思います。
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