ガストロノミー ジョエル・ロブション (Joël Robuchon)/恵比寿

先日お邪魔したロブションが大変素晴らしかったので、訪問する頻度を上げることにしました。この日は初夏の気持ちの良い夜で、高い空に雲も少ないロブション日和です。
シャンパンゴールドと黒で統一されたダイニング(写真は公式ウェブサイトより)。前回お邪魔した際は外国人ゲストが大半を占めたのですが、この日はフルで日本人でした。日によって波があるのかもしれません。サービスは程よくカジュアルで、一見ゴージャスであるもののゲストに緊張を強いることは一切ありません。客を委縮させる接客はなく、リラックスさせる雰囲気づくりです。
ミシュラン3ツ星のグランメゾンとしてはワインの値付けは良心的で、何なら1万円を切るボトルも用意されているくらいです。この日は1998年生まれのギャルとお邪魔したので、同年のモンローズを目玉として頂きました。タバコ、革、土、スパイスといった複雑なアロマが広がり、骨格のしっかりした力強いタンニンと優れた酸がバランスを保ちます。
アミューズは温かいゴーフレット。サクサクとした食感が心地よく、続いて次にエビの凝縮された旨みとウニ特有のクリーミーで磯の香り豊かな甘みが口いっぱいに広がります。先頭打者ホームランな美味しさです。
スペシャリテの「キャビア・ アンペリアル 」。たっぷりのキャビアに旨味の強い蟹のほぐし身、濃厚な甲殻類のジュレ、まろやかなカリフラワーのピュレが美しく層をなして盛り付けられています。素材の旨みが凝縮された贅沢で芸術的なひと皿ですが、時節柄、ミャクミャクに見えなくもない。
ロブションのパンは旨すぎるので、後続の料理やスイーツの量を勘案し、戦略的に臨む必要があります。トマトの旨味が詰まったクグロフは相変わらずの美味しさで、ベーコンやチーズを用いたオカズ風のパンも素晴らしい。ああ、もっと広大で深遠な胃袋が欲しい。
仔ウサギとフォアグラのテリーヌ。仔兎の繊細な旨みと、フォアグラの濃厚なコク、そしてルバーブの爽やかな酸味が絶妙なハーモニーを織りなします。仔兎のあっさりとした肉質の中に、とろけるようなフォアグラの豊かな風味が溶け込み、しっとりとした舌触り。雑なフランス料理店の焼きっぱなしのフォアグラとは段違いのクオリティです。
リコッタチーズを詰めたラヴィオリ。口に含むとラヴィオリの中からクリーミーでほのかな甘みのあるリコッタチーズがとろけ出します。グリーンアスパラガスのヴルーテを追加で注ぎ、半径3メートルにアスパラガス特有の青々しい香りが広がる。香水として売り出したいくらいです。
お魚料理は太刀魚とホタルイカ。太刀魚は身が繊細で淡白ながらも上品な旨みがあり、ふっくらとした仕上がり。ホタルイカは濃厚な旨みと、プチッとした独特の食感が魅力的。内臓起因の濃厚なソースも堪らなく旨く、日本酒が欲しくなるひと品です。
メインは仔鳩をお願いしたのですが、思いがけないスタイルで登場しました。仔鳩の胸肉と内臓をキャベツで優しく包んでおり、内臓特有の深みとコクが、キャベツの甘みと共に溶け合い、滋味深い味わいです。これは世界最強のロールキャベツかもしれない。仔鳩の多様な魅力を凝縮した傑作です。
付け合わせに滑らかなマッシュポテト。単なる付け合わせ以上の存在感があり、選び抜かれたジャガイモを丁寧に裏ごしし、バターやクリームなどを贅沢に加えて作られるため、驚くほど口当たりが良い。料理全体のバランスを整え、より一層美味しく引き立てる、まさに究極の脇役と言えるでしょう。
お待ちかねのチーズワゴン。相変わらず状態が良く熟成度合いも完璧で、フランスチーズの多様な魅力を凝縮しています。私はエポワスにロックフォール、ヴァランセとブリアサヴァランを注文。個性豊かなチーズが香りと味わいをモンローズと共に愉しみます。
デザートにスフレ。オーブンで焼きたてならではのフワフワとした優しい口当たり。シャルトリューズのリキュールが香る軽やかで温かい味わいで、添えられたピスタチオとの相性も抜群。ハーブの香りとナッツの風味が互いを引き立て合い、洗練された大人の味わいです。
思わず歓声が上がるデザートワゴンが2台も登場します。1台目はオペラやミルフィーユ、タルトやアイスなどのごっつい系で、2台目はチョコやマカロン、焼菓子などのミニャルディーズ。腕まくりをして注文に臨み、甘味だけで5千キロカロリーは摂取したかもしれません。
上質な紅茶と共にフィニッシュ。ごちそうさまでした。しっかりと食べ、上質なワインも頂いたのでお会計はひとりあたり10万円。高価ではありますが質も正比例しているので、ある意味では非常にリーズナブルな食体験と言えるでしょう。

帰宅後は2時間ほど気絶し、シャワーを浴びた後も朝までぶっ通しで寝続けました。「ロブションに30歳までに行けたらイイ女」という都市伝説がありますが、あれは単に20代の内臓でないとロブションの神髄を堪能できないことに由来する気がする。美食にも体力が必要なのだ。

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