やました/徳島

徳島は海産物王国にも関わらず鮨の名店が少ない。食べログのランキングを上から辿り自然と行きついたお店が当店です。徳島イチの飲み屋街「栄町」にあり、カウンター7~8席に個室と、ある意味銀座っぽい立ち位置です。
ハンドルキーパーの私はノンアルコールビール。妻のビールの泡の肌理が実に細かく、その喉越しの良さを想像し嫉妬する。初めてのお店なので当店の実力を最も知ることができる「おまかせ」をオーダー。
特に説明無く黙って供される前菜。煮タコやカラスミなど酒のツマミ。ああ、お酒が飲みたい。
お造りは左上から時計回りにカンパチ、クエ、アオリイカ、ウニ、ヒラメ、ヨコ(マグロの幼魚)。見た目は豪華ですがこの1皿を2人でシェアするためその喜びも2分の1です。徳島県産のウニが良いですね。その他はまあ一般的な鮨屋で食べるそれと同様です。ちなみに当店の魚は冷凍物は用いておらず全てが天然だそうな。
サワラを焼いたもの。なんと、この皿まで2人でシェアせよとのこと。魚の切り身を2人で分け合ったのは生まれて初めてです。魚もそうですし、付け合わせの茶色いやつまでシェア。
白甘鯛。こちらもシェア。謎のシェアリングエコノミー絶賛開催中。もしかすると大将には私の妻が見えていないのかもしれません。あるいは「シックス・センス」のように、私は既に死んでいるのかもしれない。
驚きました。なんと茶碗蒸しまで2人で1杯です。大学生の自炊でもこんな真似はしないでしょう。私が風邪でもひいていたらどうするつもりなのだと憤っていると「どっちがどれだけ食べたのかわからなくなるじゃない!」と、妻が心配していたのは量であった。

具材はアワビや百合根など私の好きな食材ばかりなのですが、さすがに茶碗蒸しのシェアはちょっと。。。ちなみにスプーンはきちんと2本供されたので、「ゴースト~徳島の幻~」説は否定されました。
クエ煮付け。茶碗蒸しをシェアした我々は、煮付けを分け合うことぐらいへいちゃらです。しかしながら骨ばかりで可食部は少なく「もういいや、全部あげる。骨とるのめんどくさい」と、つむじを曲げる妻。
バビョーン!なんとお椀まで2人で1杯です。間接キス必至!バクテリアの交換開始!我々は夫婦だから良いようなものの、これが微妙な関係のふたり、例えば上司と部下や、接待だったりすると、おお神よ、それは悪夢以外の何物でもないですぞ。倍払うからもう1杯欲しい。もしくは半分量でいいから2杯に分けて欲しい。洗い物が増えるのが嫌なら私が洗います。
にぎりに入ります。まさかにぎりも2人で1カンかと覚悟していたのですが、無事ひとり1カン供されました。当たり前のことが当たり前に遂行されるだけで嬉しくなる。

タネそのものは脂タップリ旨味タップリで美味しい。ただしシャリが全然ダメですね。ギュウギュウのカッチカチに握られており、オニギリに刺身を乗せただけのような握りです。
カタクチイワシ。ほほう、アンチョビのあの魚を握りにするとな。もちろん人生初の体験であり楽しみにしていたのですが、びっくりするほど不味くて鼻血が出ました。オイルサーディンを生で食べているような感覚。
ムツ。赤ムツ(のどぐろ)を除いて、あまり生では食べることのない系統の魚ですが、カタクチイワシと同じ感想でした。そもそもネタがパッサパサ。天然物がどうのこうの言う以前に、食材の管理を真面目にやって欲しいです。また、いくつ食べてもシャリが良くないですね。温度でや口の中でホロリと崩れる感覚、タネと混然一体となる過程までを全くイメージできていません。
〆鯖。タネそのものは悪くないですが、やはりシャリはベッタベタのカッチカチ。シャリの上にタネが乗っているだけの陳腐極まりない握りであり、言葉を選ばずに述べると海外の地方都市にある日本料理屋のそれと大差ありません。
マグロ。タネはまあまあですが、握りとしてはペケ。加えて先の〆鯖から料理の説明を放棄し自分の世界に閉じこもる店主。見りゃわかるだろ、という意味でしょうか。
説明が無いため何処の中トロか何トロか不明です。それでもやはりタネだけについて言えばまあまあ。

そうそう、大将に余裕が全くないのも気になるところです。厨房はぐっちゃぐちゃにとっ散らかっており、レモンは転がりツメは跳ね跳び箸はまな板から落ちる。こんなにてんてこ舞いになり醜態を晒すのであれば、オープンキッチンなどやめてしまえば良いのに。そもそもなぜ客は4人しかいないのでここまでテンパるのか。一挙手一投足ごとにため息をつくのは客が不安になるので心から止めてほしい。
イクラ。私が補正したためそれなりに整っていますが、粒がこぼれ落ちるわ(意図した「こぼれ」では決してない)飯粒は飛び散るわ海苔は剥がれるわで、土曜の昼の手巻き寿司以下の軍艦です。

バイトの使い方も上手くないですね。彼女は心を失った機械のように皿を洗い続けるだけであり、その存在価値はそれ以上でもそれ以下でもありません。客から酒の注文をとったり済んだ皿を下げたりと、活躍の場は無限大であるだろうに。
車海老。個体そのものはビッグサイズであり食べ応えがあります。が、やはりシャリが。。。加えてガリが無くなっても追加してもらえず、皿に飛び散ったタレを拭くこともない。このお店は他の鮨屋のサービスや立ち振る舞いなどを知らないのか。
穴子。いったん炙っているのですが、その過程において1枚の肉がバランバランと砕け散っている瞬間を目撃してしまいました。もうたくさんだ。早く東京に帰ってビリーズブートキャンプの続きをやりたい。
大将が最後の最後に「いかがでしたか?」のような声をかけてくるのですが、そのような見せかけの愛想を振りまかれても深まるのは親睦どころか溝ばかりである。妻の彼に対する態度も自己破産した友人に対する態度のようによそよそしい。

久々に酷い鮨を食べました。私のような半可通ですら業腹となる食後感であり、「インデペンデンス・デイ: リサージェンス」を観た後のような絶望的な感覚が当店にはあります。

支払金額は酒抜きでひとりあたり1万円を超えました。費用対効果の悪さもさることながら、そもそも鮨屋ひいては飲食店として成立していない。帰りの道すがら「せっかくの旅行なのに、なんという店を選ぶのだ」と、そこから先は文字にするのがはばかられる言葉で妻から罵倒されました。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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