スターリング・ステーキハウス(Sterling Steak House)/ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)

クルーズ船の食事は基本的に無料ですが、当店はひとり29ドルのカバーチャージが必要となります。事前予約が必要で、乗船2日目に予約デスクに電話した際は「下船まで全て満席」との案内で軽く呪っていたのですが、最終日の夜に「もしかしてキャンセル出てたりする?」と改めて連絡すると、19時に2名でOKという願ったり叶ったりのオファー。
予約時間に訪れると身長2メートルはありそうなヘッドウェイターが案内。全席予約で埋めているというわけではなく、あえて余裕を持たせて空席を設けているように見えました。ウォークイン(予約ナシ突撃)でも意外に入れるかもしれません。
ワインが驚くほど安い。レストランでの飲食だというのに、ドンペリは200ドルを切り、5大シャトーも10万円程度、オーパス・ワンなど220ドルと、日本の酒屋の半額の値付けです。

まずはナパのシャンドン(4,000円代!)で乾杯。アメリカ船らしく思い切り冷やしたグラスとボトルで食欲が刺激されます。
前菜その1。クラブケーキ。惜しみなく蟹肉が投入されており、小サイズのカニ缶をそのまま揚げたような迫力があります。
揚げ油や衣のベタつき加減こそ褒められたものではありませんが、単刀直入に美味しい1皿でした。
こちらは大海老。焼いただけのシンプルな調理ですが、エビとはそのような食べ方が一番旨いのも事実。タルタルソースはミックスフライ定食のそれのように類型的な味覚ですが、これはこれでわかりやすく美味しい。
エビのビスクスープはイマイチ。濃厚な出汁をとったまではよかったのでしょうが、そのあと別の何かでのばしているのか、非常にぼんやりとした味に成り下がっていました。風味に可能性は感じられたので、次回はもっと濃縮したものを飲みたい。
ステーキはポーターハウスをレアで、と店員に注文すると、ヒュウっと口笛を吹かれました。ポーターハウスとはT字型の骨付き肉のこと。骨を境にストリップ部分とフィレ部分に分かれます(フィレ部分が少ないとTボーンステーキと呼ばれる)。22オンス(623グラム)と独りで食べるにはヤバすぎる量です。

しかしこれが実に正統的なステーキで美味。やはりポーターハウスは脂身の多い部分とフィレ部分の両方を楽しめるのがいいですね。塩コショウのみでも充分に美味しいのですが、色々なソースで味変を進めながら、特段ヒイヒイ言いながらということもなく、普通に美味しく完食できました。
ルーチェの13が15,000円程度と、小売価格とそう変わらない(というか寧ろ安い?)価格だったので思い切って注文。保存状態が気になるところでしたが問題なし。デキャンタージュが下手くそ過ぎでてわろてもうた。

外観は限りなく黒に近い赤であり凝縮感が感じられます。香りを取ると、黒系果実と赤系果実のミックス。仄かにミント。サンジョベーゼとメルロの半々程度で造られているそうですが、とにかくシルキーで滑らかな舌触り。タンニンはしっかりとあるものの、とにかくエレガント。芳醇そのものな赤ワインであり、長い長い官能的な余韻の虜になります。
付け合せは焼いたアスパラやマッシュルームなど。アスパラって繊維質が多いからか、ものすごくお腹膨れますね。
有料レストランだからかデザートも結構美味しい。 アーモンドプードルとバター主体の生地に、滑らかなピーナッツバターとミルクチョコレートのクリーム。見た目ほどに甘さは強くなく、どちらかというとピーナッツの風味が強烈です。
アルコールで気を良くしてデザートを追加注文。レモンタルトにたっぷりのメレンゲ。こちらもアメリカ船のスイーツにしては上々の出来でした。
他のクルーズ船のステーキハウスに比べてハコが貧弱な部分はありますが、食事については陸上のステーキハウスのそれと同等がそれ以上のクオリティ。何よりカバーチャージさえ払えば好きなものを好きなだけ注文できるのがいいですね。ワインが安いのも酒飲みには堪らない。

やはりとんでもない量のステーキを、ちょっと高価なワインと供にバクバク食べ進める様子はお店としても気持ちが良いのか、色んな店員に声をかけられ感想を求められ、この瞬間、私はちょっとした人気者でした。

旨いワインに旨い肉。心に残ったディナーでした。


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クルーズ旅行が好きです。ホテルごと移動して、朝起きたら違う土地に着いているという手軽さがいいですよね。煩雑な荷造り&荷解きとは無縁。交通費と食費も込みなのでリーズナブルです。
子育て中のイラストレーターが漫画でクルーズの素晴らしさを伝えてくれるエッセイです。クルーズ旅行って、高級なイメージがありますが、子連れなどの場合は総額では割安になることが多い。そのような事実や基礎知識を非常に解かり易く著している良本です。クルーズをまだ一度も経験したことが無い人が読むに打ってつけ。

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