Ostu(オストゥ)/代々木公園

代々木公園の西門からすぐ。緑に溢れ、外国人が余裕を持って暮らすエリアに佇むミシュラン1ツ星イタリアンレストラン。人生トップクラスに旨かったレストランété(エテ)のすぐ近くです。
店名はピエモンテ州の方言で 「オステリア(食堂)」を意味します。シェフは「アントニオ」など都内のイタリアンで研鑽を重ねたのち、ピエモンテ州バローロ村の星付きレストラン「ロカンダ・ネル・ボルゴ・アンティーコ」で5年を過ごしました。
グラスのフランチャコルタで乾杯。果実味が豊かで輪郭のある味わいで私好み。グラスで1,400円でしたが、ボトルでは6,000円代からありリーズナブル。

「お待たせ」おっぱいを放り出さんばかりに大きく胸が開いたワンピースを身に纏って登場する連れ。ど、どうしたんだ、リオのカーニバルか?そんな服を着て、と、彼女のガイノイド脂肪に釘付けになりながら何とか出迎える私。
藁で炙った初鰹のサラダ仕立て。香ばしい香りにフレッシュで健康的なカツオの味わい。アスパラソバージュやタプナードなどシンプルな付け合せも解かり易い味覚でグッド。

「今日は勝負服」と、彼女は私の反応を楽しむかのように笑う。「この後は億単位の商談なの」
イタリア春野菜とサルシッチャ(ソーセージ)のグラタン。 たっぷりのベシャメルソースにたっぷりのチーズ、たっぷりのサルシッチャとたっぷり3兄弟で直球勝負な味わいです。これまた解かり易い味覚であり、普通の日本人であれば脊髄反射で旨いと感じる料理でしょう。
自家製のフォカッチャも質実剛健。ハーブの香りと塩の旨味が相俟って素朴ながら手が止まらないおいしさ。都合4ピースも頂いてしまいました。

「この前、あなたからこの本を勧められたじゃない?その通り実践してるんだけど、これが結構上手くいっちゃってさ」私は基本的に自己啓発本からは距離を置いているのですが、この本だけは結構気に入っています。
要点は「めんどくさい仕事を手放せ」「めんどくさい相手とは関わるな」「仕事は金儲けと割り切って集中して短時間で稼げ」と、当たり前と言えば当たり前のことを言っているだけなのですが、椅子に長時間座っていることを美徳とする会社に違和感を持っている社畜の方は是非ご一読を。
ピエモンテを代表する手打ちパスタのひとつ「タヤリン」。イタリア語で「細切り」を意味するタリオリーニ(Tagliolini)がピエモンテ州で変化した方言であり、卵黄がたっぷりと練りこまれたパスタです。アルデンテ原理主義の麺類とは趣きの異なる味覚であり、ふんわりと優しい食感。牛のラグーでパンチを与えていますが、これはまさに麺の美味しさを味わう一皿ですね。白トリュフなんかと合わせれば最高なんだろうな。
ピエモンテの伝統料理「ブラザート・アル・バローロ」。平たく言うと牛ほほ肉のバローロ(赤ワイン)煮込みであり、見た目は無骨な印象を受けるほどシンプルな1皿です。

そもそも私は牛肉に長時間火を入れた料理は苦手で、ネッビオーロ(バローロのブドウ)もそれほど好きじゃないのですが、この料理は別格。私にとってマイナスとマイナスをかければプラスになっちゃった感のある逞しく頑強な味わいに悶絶。

付け合せのポレンタ(コーンミールを粥状に煮たもの)も素朴ながら芯まで甘く、濃厚で強い味わいの牛肉を煮汁ごと柔らかく受け止めます。
あわせるワインはもちろんバローロ。先に述べた通り、私はバローロをそれほど好まないのですが、今回は意図的にこれを注文し、そしてその判断は大正解。やはり料理とワインには方程式があるのだ。
デザートはメロンの冷製スープに濃縮ミルクジェラート。こちらも意表を突くというよりは基本に忠実な味覚であり、血統書つきの美味しさです。イタリアンレストランでここまで美味しい甘味に出会えることはそうないであろう。
由緒正しきエスプレッソを飲んでごちそうさまでした。

いやあ、美味しかった。ピエモンテ州がそのまま引っ越してきたようなレストランであり、純朴で天真爛漫とした調理です。ランチコースにグラスワイン2杯でひとり9,000円というのは中々の値段ですが、代々木の地から気軽にイタリアへどこでもドアできると考えればリーズナブル。旨いイタリア料理をハズレなしに食べたいときにどうぞ。


このエントリーをはてなブックマークに追加 食べログ グルメブログランキング

関連記事
イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。