いいと(eat)/麻布十番


和食なのか鮨なのか、ダイニングバーなのか割烹なのか、位置づけが不明確であったため、なんとなく後回しになっていた当店。そこに町内会の美人が「いいと、すごく好き。月に1度は行ってるかも」とのことだったので、慌てて足を向けました。
想像以上に広い店内。オープンキッチンをぐるりと取り囲むカウンター席が圧巻。 白金の名店「酒肆ガランス」をヘルシーにしたような雰囲気です。
前菜3種は12時から時計回りにもずく酢、フルーツトマト、しったか貝、モロヘイヤのおひたしです。

もずく酢がいいですねえ。髪の毛のように細いのにしっかりとした歯ごたえのある健康的なもずく。酢の味わいもビビッドであり、暑い夏の一口目に最適。フルーツトマトは素材そのものはもちろん、タレというかトッピングの味わいが実に旨い。和洋折衷とはこのことである。
ボラメの唐揚げ。ボラメとはエソの子供であり練り物として流通することはあっても、都心で鮮魚として食べるのは珍しいでしょう。じっくりと火が通り骨までバリバリと。キスに似たような味わいです。
煮物は大根に金糸瓜(キンシウリ)、栃尾の油揚げ。金糸瓜というものを初めて食べたのですが、繊維状のカボチャと言うべきか、素麺のようにホロリと崩れ甘さは控えめ。栃尾の油揚げも初めて食べる。なんでも通常の油揚げの約3倍の大きさらしく、ふっくらとしたビジュアルに適度な弾力を湛えます。初めてだらけの食材で色々と勉強になった一皿でした。
にぎりに入ります。真っ赤も真っ赤なマグロくん。実に生命力を感じさせる色合いであり、その見栄えに恥じない味わいでした。
ホタテは細かく細かく包丁が入っており、大きな固体ながらも舌先でサラリと崩れるような錯覚。透明感を湛えた1貫です。
タイを食べたいな、と思った矢先、瀬戸内の真鯛が登場。このようにお店と自然にチューニングが合うと嬉しくなりますね。噛み締めるごとにこのタイが元気いっぱいに育ったことが解かるほどの弾力。舌の奥に残る海の味覚。旨い。
コハダを食べたいな、と思っているとマジでコハダがでてきました。既に私はゴーストハックされているのかもしれません。大ぶりなネタにそれに負けない仕込み方。極めて男性的でハードボイルドな味わいで好みです。
キス。こちらも大サイズであるものの、味わいも大味でした。やや臭みも残り、残念ながら私の好みではありません。
キアジ。先のキスのいまいちさ加減を倍返しで美味しい。一般的なアジよりも凝縮感がありセクシーさまで感じさせる逸品。
〆のにぎりはグッドルキンなタイ。こちらもグイグイと口腔に迫る歯ごたえならびに味わいであり美味しいですねえ。噛み締めるほどにムチっムチっとした味覚が口の中に広がります。
巻物は大トロの炙りにイクラを盛り込むという大盤振る舞い。全く持って説明不要であり、脊髄反射で旨かった。
名物のトリュフお稲荷さん。目の前でガシガシとすりおろされるトリュフの量に思わず頬を緩ませる。幸か不幸かそれほど香りの強い固体ではなく、お稲荷さんと共に食すにはちょうど良い風味でした。
思わずひゃっと歓声を上げたくなる外形。和牛炙りの生ウニのせです。これはがちばなで旨いですね。石橋を鉄骨で補強したような料理であり、先の巻物と双璧を為す優勝確実な味わいでした。
お椀も良い。出汁の旨味が強烈であり、海苔をはじめとするたっぷりの具材も名脇役。いわゆるお椀というよりも、これ単体で成立しうる料理とも言うべきか。

お会計は4,860円という発狂価格。もちろんランチであり酒を飲んではいないからこその価格ですが、それにしてもこの費用対効果の良さは鮨業界に一石を投じ文化大革命を起こさせる破壊力があります。ここ数ヶ月で最も満足度が高いランチかもしれません。次回は是非、夜にたっぷりのお酒と共にゆっくりとお邪魔したいと思います。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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