アッラゴッチャ/北浜(大阪)

突発的な用事で急遽大阪へ。
高校時代の友人に「おそらく17:30頃に体が空く予定で、21:32の新幹線の終電で東京に戻る。その間に都合つく?」と直前連絡。数分後「18:00に北浜のイタリアン予約した。20:30までに出れるよう店に伝えといたから」と返信。デキる男とは要するにこういうことである。
ご予約頂いたのはAlla Goccia。2016年の8月にオープンしたばかり。「ウチのオフィスが近くでさ、ずっと気になってたんやけど一緒に行く相手がおらんくって。○○くん(私の名)が大阪来てくれてちょうど良かった」そう、彼と机を並べた3年9組はなぜか互いを君づけで呼び合う嵐のような文化があったのです。
独立おめでとう、と泡で乾杯。彼はつい先日に独立を果たし、自ら事業を営むようになったのです。「まだまだ大変なことばっかやけど、自由は手に入れたわ」素晴らしい。自分の人生は自分がコントロールするべきだ。
始まりの一皿に生ハムと玉ねぎのスープ。玉ねぎの甘味が凝縮されており美味しいです。
お付きだし、として手前はタケノコを生ハムで包んで揚げたもの。タケノコの食感と生ハムならびにペコリーノチーズの塩気が食欲を掻き立てます。

奥はカブのスープ(ソース?)にホタルイカとハマグリが半身浴。貝の旨味とホタルイカの苦味が酒を呼ぶ味わい。シェフは相当の酒好きとみた。
パンは一般的なバゲットにフォカッチャ。フォカッチャはもう少しハーブの香りと塩気がきいたもののほうが私は好きです。

「ウチのかみさん、毎日タケマシュラン読んでるわ。今度会うたってや。たぶんハリウッドスターに会えたぐらいテンション上がると思う」
青森産桜鱒に相生産の千珠牡蠣。桜鱒はトラパネーゼ(シチリアのバジル主体のソース)がいいですね。ハーブの香りが潤沢で爽やか。千珠牡蠣はもう絶品。とにかく牡蠣の味が濃く、それでいて雑味が無く味の焦点が定まっています。表面はバリっとソテーされ、一口含むとジューシーでミルキー。今シーズン一番の牡蠣料理だったかもしれません。
豚足とホウレンソウ、スカモルツァ(モッツァレラチーズの一種)の燻製を包んだストゥルーデル。ストゥルーデルとはパイ包み焼きのような料理で、先の具材が幾重にも重なりながら一皿を構成するのですが、ややこしさや手間を考える割に印象に乏しかった。私には複雑すぎたのかもしれません。
トロフィエ。手打ちパスタにたっぷりのジェノヴェーゼペースト。白バイ貝のグニグニした食感にホワイトアスパラガスのサクサク感。旨い。もっと食べたい。
カルボナーラ。卵黄のみを用いた本格派。タルティーボの食感を活かすのは面白い試み。パンチェッタ(塩漬けした豚バラ肉)を特攻隊長にたっぷりのチーズと思い切りの良いわかりやすい味付けは私得。
メインを見据えて軽めの赤を。

奥さんの感想は有り難いんだけど、この前『ブログはそれなりだけど、実際に会って話すと全然面白くないよね』ってディスられたばっかなんだよね、と悩みを吐露する私。「そら酷い話やわ。芸人見かけて『なんかおもろいこと言え』って要求するようなもんやで」なるほどこのあたり発想が関西人である。
メインはラム。これまでは色々と捻った料理が多かったですが、大団円はどストレートな一皿でした。

ところで当店はサービスもいいですね。可愛らしいソムリエールがいつも静かに笑っており、テキパキと仕事をこなす様は非常に好感が持てます。
デザートはセミフレッド。半解凍状態のデザートでアイスクリームのような食感です。これまでの印象的な料理たちに比べると軽やか過ぎて力不足。より重厚長大なデザートなほうが私は好き。

彼の独立祝いと第2子誕生祝いを兼ねてごちそうさせて頂いたのですが、「悪いなあ、でも、ありがと!また大阪来た時は持たせてや。実はもう考えてあるねん、次のレストラン」大阪に帰る楽しみがまた1つ増えました。旧友と旨いものを食べながら思い出話に浸るのは人生の大きな喜びのひとつである。
「次来るときは早めに教えてな。他のやつらも呼んどくわ。誰呼んで欲しい?」とリクエストを受け付けられたので、□□さん、と即答。

「そ、そらまたなんちゅう難しいとこを…でも、気持ちはわかる」と懊悩する彼。ふっふっふっ、頼みましたよ期待してるから。デキる男とは要するにこういうことである。




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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉し い。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅さ れており、これをなぞれば体面は保てます。

アッラゴッチャ
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はがくれ/梅田

Facebookで『大阪にいまーす』的な投稿をすると、ある有名飲食チェーン店のオーナー社長から「オフィス近くやから遊びに来てよ」とご連絡頂き、その数十分後に本当にお邪魔するのが私流。

他の用事があったため30分と短い時間で意見交換です。「タケマシュラン、毎日読んでるよ。店のいじくりかたがホンマおもろいわ」いじくってるつもりは無いのですが、私の創り出した文章で楽しんでくれる方がいるという事実は心から嬉しい。
国内外のレストラン談義に花が咲く。「この前サンフランシスコ出張やったから、ほい、お土産」とダンデライオンチョコレート。嬉しいなあ。

フレンチランドリーの予約、取れるかも。The World's 50 Best Restaurantsの審査員が仲間でさ。次、サンフランシスコ行く時は早めに連絡してや」フレンチランドリーというのはナパにある『全米一予約の取れないレストラン』であり、2003年と2004年のThe World's 50 Best Restaurantsでは世界1位、2006年にミシュランガイドのサンフランシスコ・ワインカントリー版が発行されて以来三ツ星を守り続けている化け物フレンチです。

「来年はウチのチェーンで何かおもろいことやろうと思ってるから、なんかアイデアちょうだいよ。東京出張作るから、ゴハン行こ」早速6月の予定を調整し、再会を誓い合う。
さて本題。梅田はがくれ。恐らく大阪で最も有名なうどん屋です。ネット上の情報では行列必至とのことでしたが、平日正午にお邪魔して4人待ち程度でした。
並んでいる際におばちゃんが注文を取りに来てくれるのですが、「にいちゃん、ひとりか?ひとりやったら一番奥、空いてるから、先入ってええで」と待ち順列をゴボウ抜きです。
メニューの種類は結構多い。このほか、おでんもありました。私は一番人気の「生じょうゆ定食」を注文。800円です。
当店は名物店主の存在感抜きにしては語れません(写真は公式ウェブサイトより)。大阪うどん界のオーソリティ。

「にいちゃん、初めてちゃうからわかるやろ?」とさっそく店主に声をかけられる。いえ、初めてですと伝えると「じゃ、こっちでやっとくわ、箸、持っといてや」やっとく?何を?おもむろに醤油さしを掴み取る店主。
着席後すぐに着丼。「ええか、醤油は2往復半や、ワンツースリー」スリーやと3往復やんか、のような無粋なツッコミは認めない。当店は店主が神であり、神は店主なのである。
「ええか、絶対混ぜるなよ。混ぜたら粘り気がでてまずぅなるからな。ドント・ミックスや」ひょうきんというか何というか、大真面目な顔でこのような台詞を言うのだからたまらない。
「2本だけ取って、思いっきり高く上げてみ。ほんで、一気にすするんや。後は勝手に入っていきますわ」

茹でたて締めたての瑞々しいうどん。びよーんと伸びつつもしっかりとした弾力。鮮度にこだわる理由がわかります。徳島産のすだちの香りが軽快で、生醤油をたっぷりと含んだ大根おろしの爽やかさも心地よい。
個人的にはかやくごはんがお気に入り。炊き加減は程よく固く、味付けもしっかりしており、一皿で完結している味わいです。
店内に目を遣ると、店主は他の客を鋭意指導中。「こっちでやっときますわ」はあ、スンマセンと返す客に「なんで謝んねん、うどん食べるだけやろ」「2本取ってや、あかん、ちゃんと見てみ、それやと1本や」客に美味しく食べてもらおうと常に一生懸命。物言いは乱暴ですが不思議と心地のよいやり取りです。

うどんそのものの味は唯一無二というものではなく、まあ普通に美味しい讃岐うどんといった所ですが、店主とのやり取りを含めてエンターテインメントとして楽しむことのできるお店です。大阪のおっちゃんと会話できる店として、観光客にオススメ。

お会計は自己申告。生じょうゆ定食の大盛り、とレジのおばちゃんに伝え1,000円札を渡すと200円が返ってくる。あれ?大盛りですよ?おつり多くないですか?と訊ねると、「かめへんかめへん、ダブルまでは同じ料金でやらしてもらってますわ、また来てや」また来ます。


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梅田はがくれ 本店

リストランテ ル・ミディ ひらまつ/西梅田


突発的に大阪に用事ができ、そういえば2年も家族に会ってないなあということで、タケマシュラン一族を召集して食事会。未就学児も含む大人数なので個室必須。しかし親孝行も兼ねるので、きちんと美味しいお店にしなきゃ。このような場合に絶対的な信頼を寄せるのがひらまつグループです。
Ristorante le MIDI Hiramatsu(写真は公式ウェブサイトより)。ASOではないひらまつブランドのイタリアンレストラン。ハービスのブルガリ跡地であり、豪奢なアプローチ。
内装も驚くほど豪華(写真は公式ウェブサイトより)。前回お邪魔したのはランチですが、夜のほうがよりいっそう風格を強く感じます。
アルコールを摂るのは父と私のみだったので、まずはふたりで1本を。ひらまつグループお馴染みのクレマン。安定した味わいなのですが、せっかくのイタリアンなのだから、イタリアの泡も用意して欲しいところ。
最初に1口はモチモチとした食感のタコ焼きのようなものと、生ハムのクッキー。タコ焼きがいいですね、程よい塩気でジューシー。4歳児が親指を立てていました。
フォカッチャは黒豆入りでしょうか。所々サクりとアクセントがきいており良かったです。プレーンなほうも正攻法で好き。
子供用メニューのサツマイモのポタージュ。子供用と侮る無かれ、一口頂きましたがきちんとした料理です。素材の味が直に伝わり、甘い。
大人の前菜。左上は洋風の茶碗蒸し。百合根のホクホク感がグッドです。その他こまごまとした一口料理がありましたが、ポーションが小さすぎて記憶には留まらず。
子供用のパスタはボロネーゼ。的確な茹で加減にハンバーグもかくやと思わせる肉の量。それまで騒がしかった子供たちが一心不乱に掻き込み始め、あっという間に完食。恍惚の表情を浮かべながら「ウチのと全然ちゃう」。
大人用のパスタはタヤリン(卵入りの手打ちパスタ)をブロード(海鮮出汁)で食す。目が覚めるような菜の花の緑とハガツオの鉄分。なのですが、全体としてまとまりがなく個々の食材をバラバラと食べているかのような気分。そういう意味で、行列のできるラーメン屋のほうがレベルが上です。
フォカッチャの次はいわゆるパン。密度があって小麦を感じることができました。
子供向けのメインディッシュはハンバーグ。これは素晴らしい。プロ中のプロが本気で家庭料理を作ればここまで美味しくなるのです。まず、肉の味が濃い。中央までしっかりと火が通り切っているのに風味を損なうことがありません。ソースも甘さとコクが絶妙なバランス。ブランド和牛を用いないハンバーグとしては人生トップクラスに美味しかった。
大人の魚料理は何だったっけな?子供の相手をしていて説明を聞き逃してしまいました。ポーションが大きく味も良かった記憶あり。海老のムースが伸びやかで、全体を取りまとめる赤ワインソースも秀逸。
グラスであわせたワインはコチラ。この格のお店でグラスが1,600円で飲めるのはまことにリーズナブルですね。
大人のメインディッシュは大和牛。肉そのものは無難に美味しいのですが、驚いたのは付け合わせのレベルの高さ。ポルチーニのソテーは大地の味が直線的。ソースを含めてこれぞ絶品。ジャガイモのグラティナート(パン粉やチーズなどをのせてグラタンのように焼き色を付けること)も手抜きなし。腹は膨れつつあるものの、最後まできちんと旨いメインディッシュでした。
こちらも1,600円とお買い得。当店はグラスワインが豊富なので、最初はボトルにしないで色々楽しめば良かったかなあ。
子供たちのデザート。皿が置かれた瞬間に目を輝かせる7歳児♀。女の子って、こんな頃から女の子なんですね。
大人のデザートはイチゴのティラミス。かまくらに見立ててあり、中にはシロクマさんが鎮座します。が、味はあまりパッっとしませんでした。凝り過ぎ。子供用のストレートなスイーツのほうが基本に忠実で美味しかった。
小菓子はマカロンにギモーブ、ビスコッティ(?)。納得のクオリティを保っており満足。
折り目正しいコーヒーを飲んでごちそうさまでした。

大満足です。やはりこのような会食では抜群の安定感を見せてくれるひらまつグループ。私の期待に100%応えてくれました。個室料が取られたりしないし、総額としてそれほど高くないのも嬉しい。ここぞという局面で今後も愛用させて頂きたいと思います。


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ひらまつ関連のお店にはかなり行きました。全般的に「外さないレストラン」で安心できるのですが、たまにハズレもあります。

「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

リストランテ ル・ミディ ひらまつ