純豆腐 田舎家/麻布十番

2番出口すぐ。大久保あたりにある猥雑な韓国料理屋のような佇まいで、ものすごく目立ちます。
迷うことなくスペシャリテの純豆腐(スンドゥブ)を注文。店員のおばちゃんの目が怪しく光り、「純豆腐は跳ねると絶対に洗っても落ちないから」と、紙エプロンを手渡されます。「絶対に落ちないんだから」と2度繰り返す店員。迫力満点である。
注文後、40秒で支度されたランチセット。お盆が学食のトレイのようで心が和みます。
地獄絵図の様相を呈した純豆腐。ぐつぐつと煮立つ様ともうもうと立ち上る湯気。カプサイシンの香り。食欲が刺激されますな。
小鉢は3つ。ワカメとダイコンの酢の物は穏やかな酸味と大根のシャキシャキ感で食前にぴったり。
キムチも酸味が強く、私の好みではありませんでした。まあそれは人の好み。韓国人の友人が「家でキムチを作るのは当たり前。お母さんとおばあちゃんで作るので味が違うのが面白い」という台詞を思い出す。
モヤシはプラスチックのような味わいで美味しくなかった。普通に茹でてごま油で和えるだけでいいのに。
ごはんは韓国の伝統的な赤米が添加されたタイプです。少し色が加わるだけでオリエンタルな表情を見せてくれるのが各国料理の楽しいところ。
ごはんをスプーンにのせ、純豆腐地獄の釜の液体に浸し、簡易的なおじや状態にして掻きこみます。唐辛子の刺激を半熟の黄味が緩和してくれ、程よい辛さに。

比類なき美味しさというわけではありませんが、十番で1,000円のランチという意味では満足。今度は夜に来てみよう。
恒例のレジ横ガム。韓国料理屋のガムって、どうしてこう壊滅的に不味く、その味ですら瞬間的に消え失せるのでしょうか。スーパーとかでは見ることの無い銘柄だし。不思議。


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麻布十番での外食は、費用対効果が悪いわけではありませんが、最下限の価格が高めに設定されているお店が多いです。ランチ1,000円以下で探すのは至難の業ですが、下記の通り、いくつかオススメできるお店もあります。
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。


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くろぎ/湯島


エージェントから「くろぎでドタキャン発生!」との連絡。当店は日本でトップクラスに予約が取れないお店であり半年待ちなんてザラ。千載一遇のチャンスを逃してはなるまいと脊髄反射で席を抑えてもらい、そこからご一緒する方を探し始めます。予約困難店はどうしても無鉄砲に臨みがちだと苦笑い。
くろぎ。東京を代表する和食店。食べログでは全体のトップ100入りでポイントは4.32。
店主は「料理の鉄人」改め「アイアンシェフ」では、「和の鉄人」として活躍した1978年生まれの黒木純さん(写真は公式webサイトより)。伝説化している「京味」の出身です。和食の世界って年功序列感が強いから、若きエースの面目躍如は心から嬉しいです。
通されたのは2階の個室。空調の関係かテーブルに振動が伝わる点と、窓の外より歓楽街の嬌声が伝わってくるのはご愛嬌。近々芝大門に移転するらしいので、この問題は解決されることでしょう。席数を大幅に絞るらしいので、常人は完全に足を踏み入れることができないお店となってしまうんでしょうね。
「お待たせ。今日は誘ってくれて本当にありがとう」と時間通りに引き戸を滑らせるバリキャリ女子。飲食を語る上で「時間を守る」というのは非常に重要です。洋の東西を問わず、まともな店であればバラバラに食事を出すなどもっての外。いくら美人であったとしても、遅刻魔やドタキャン常習犯はきちんとしたお店に誘われることは絶対に無いのでご注意を。

もっと言うと、誘う側は相手の食レベルをすごおく見ています。「このパンケーキきゃわたん☆コスパも最高!」のような投稿をしている方を立派なお店にお誘いすることはまずありません。これまでどのようなレストランを経験しどのような哲学を持っているか、食に対しどれだけの思い入れがあるか、などのフラグがしっかりと立っていないと、私の脳内の『誰と行こうかな検索』にひっかかることは無いのです。

「あたしの周りの男たちセンスなさすぎ!誰も素敵なお店に連れて行ってくれない!」と嘆く貴女。その理由は自分自身にあるのかもしれませんよ。
閑話休題。乾杯の生ビールは八海山。ごく一部の飲食店にしか卸されない激レアビールです。うすにごりの酵母の香りがフルーティ。食中酒というよりは、これ単品でじっくりと旨い。
胡麻豆腐。表面をガリっと威勢よく焼き、一方で内部のモチモチ感を保持。幸先良い味わい。細かいですが、山葵がすごく美味しいです。
じゅんさいと黒あわび。夏ですなあ。じゅんさいの球がプツンプツンと口の中で弾け、黒アワビのコクが舌先で踊る。ただし、若干酸味が強くどぎつい印象を受けてしまいました。
万願寺唐辛子を煮る。これは面白い。万願寺唐辛子をこのように食べるのは初めてです。ただし想像通りの味わいで特長は見当たりません。ところでここでも細かいですが、鰹節がとんでもなく旨かった。
ミキュイ状態の鱧。身にまとうのは鱧子です。これは控えめに言って絶品。清らかな鱧に梅肉をちょこんと漬けると夏が満開。鱧子の元気な旨味が奥行きを広げます。中骨を揚げたスティックは至高のかっぱえびせんのよう。特筆すべきは鱧の肝。風格漂うコッテリとした香りと緻密なコク。
慌てて黒龍特選吟醸。気品溢れるフルーティな香りが炸裂。肝と共に無上の歓び。
お椀は海老しんじょう。海老をつぶすことなく歯ごたえを感じさせ、そのものの味を楽しませてくれます。出汁が絶品。海老出汁と鰹出汁を半分ずつ。旨味と香りのオーケストラ。痺れました。
 八寸。酒飲みには堪らないラインナップです。
ほおずきに鎮座するのは解した貝柱にミョウガとセルバチコ。熟した貝柱が酒を呼ぶ。手前のバチコが洒落かどうかはさておき、濃密で逞しい味わいです。
黒キャベツと塩昆布合わせたものは印象が薄い。というか塩昆布の味しかしませんでした。鴨の生ハムは傑作。艶やかな舌触りと健康な肉質の凝縮感。繊細なゴボウに鴨肉を混ぜ込んだ一口もお見事。一方でインゲンにゴマのソースは十人並み。炒り卵に塩辛を載せたものも普通です。
ダイコンとニンジンの松前漬けも標準的。トマトのレモン酢(?)漬けは目の覚める酸味にハッとする美味しさ。小さなタマネギも甘味と酸味のバランスが素晴らしかった。抹茶と豆乳を固めたものは美味しいのですが唐突でもあり意図がわかりませんでした。
それにしても先の八寸はアルコール泥棒。あの一皿で2合いけちゃう。旨味の強い黒龍純米吟醸で迎え撃ち。
シビという、青森産本マグロの子供。夏らしく爽やかな脂の乗り心地であり肌理がどこまでも細かい。肉厚のスズキにはカボスを絞りポン酢で一口。喉越しが軽やかな一方で、食道からも味が伝わってくるかのような海の豊かさ。淡路産のタイは昆布締めがチョイ強めであり残念ながら好きじゃない。シンプルにワサビ醤油で食べたかったなあ。あ、繰り返しますが山葵が心から美味しい。そのまま食べたり醤油につけたりと、全部平らげてしまいました。
酒のペースが酷くなってきました。黒龍吟醸いっちょらい。口当たりがクリアで食事を邪魔しない。万能選手です。
うなぎ。吉野川の天然物と聞いて拍手喝采。稀少な食材に巡り遭えた奇跡に乾杯だ。挨拶に来てくださった店主も自信満々で、ダイアモンドのような食材を調達できたことに興奮気味。

シンプルに焼いただけの調理。黒く香ばしい焼き目の香りが食欲に点火。一口で頬張ると思わず背筋が伸びる食感。緩急のある弾力に気品すら感じられる脂の心地よさ。連れと共に目を見開き、思わず無言で鰻に向き合う崇高な10分間。もうため息しか出ない。いわゆる溜息山王です。ここは地上の楽園か。
 鱧さん再登板。今回はしっかりと火を通し食感に変化を与えています。
梅肉を湛えたスープに潜らせてしゃぶしゃぶ風。これはちょっと謎だなあ。決して不味くはないのですが、複雑で不思議な味わい。タマネギの存在感も不気味であり、悪い意味で印象的な皿でした。
黒龍純米吟醸に戻る。こうしてじっくり振り返ると、我ながら飲み過ぎである。
ナスの煮浸しに山盛りのウニ、むっちむちのとろろ芋。ううむ、ナス旨し。シンプルな食材をシンプルな調理でここまで旨く仕上げるのはさすがのアイアンシェフ。ウニは見た目通り当然に美味しいです。とろろ芋は微妙。全体をまとめ上げるというよりは、ぼんやりと全体を薄雲にかけるようでした。
お食事です。バコーン!土鍋様登場。
 帆立の貝柱の出汁で炊いたトウモロコシのごはんです。
 お漬物は忍者の巻物みたいな器に入れられ可愛らしいのですが、味わいは普通でした。
味噌汁はさすがの一言。強めの出汁が支配的で上品な味噌が寄り添うといった形。豆腐や油揚げなど極々単純な具材ですが、街の定食屋とは圧倒的なレベルの違いがそこにはあります。
炊き込みごはんはトウモロコシの甘さが輝きを放ちます。他方、ごはんそのものは薄味。もっと帆立の旨味を前面に出したもののほうが私の好みです。まあ、最後の最後でそんな濃い味疲れるワイという意見もあるでしょう。
コクのある緑茶でお口を整えつつ、
甘味は葛切り。絶巧。こんなに美味しい葛切りを食べるのは初めてです。もちろん出来たてであり、イカソーメンのような断固とした歯ごたえが饗宴の締めくくりに相応しい。徐々に白濁し弾力が和らいでいくのも一興。黒蜜の味わいも手堅く、もしマナーとして許されるのであれば残ったきな粉を黒蜜にぶち込んで、スプーンでガシガシと食べ器をベロンベロンと舐めていたところです。
皿数が多く、それぞれのポーションもしっかりとあったので満腹。食べ切れなかった炊き込みご飯はお土産にして頂きました。翌日の昼に賞味したのですが、ゆうべよりも帆立の香りが立っており、常温で食べたほうが美味しいような気がします。もしやここまで意図しているのであれば恐れ入る。

本日のハイライトは兎にも角にも鰻ですね。逆に言うと、あの鰻が無かったとしたら暴れていたかもしれません。龍吟のように強烈な個性というものは無く、全体を通じて作者不詳の無難な料理といったところ。

また、サービス料をたっぷり10%取る割には、そこらの居酒屋と大差ないおもてなし力です。客のペースを斟酌せずにドンドコドンドコ次の料理を持ってきて、目の前で皿を渋滞させてくるので居心地が悪い。連れが女性ということのみをもって「彼女さん」と呼びつける。このあたりは同価格帯グランメゾンの客あしらいを学ぶべきだと思いました。

それらを考慮に入れた上で、ひとりあたり4万円と考えるとやっぱ和食は高いなあ。もちろん、鰻は8,000円で、刺身が5,000円で、八寸が3,500円で、、、という具合に積み上げていけば飲んで食べて4万円という価格は全然納得なのですが、全体を1本のストーリーとして評価すると、そりゃあそれだけ払うんだから当然美味しいよね、という感想です。例えばフロリレージュであれば味はもとより世界観を含めて感動を味わうことができる上に3万円を切ってくる。まあこれは当店がどうのこうのというよりは、和食という料理の性格に因るものでしょう。

私に和食の真髄を見極めることは未だできない。もっとお金持ちになって、1万円を今の1,000円ぐらいの感覚で使えるようにならないと、和食は心から楽しめないのかもしれません。

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前述した通り、和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。

3ヶ月前にトラブった例の店からの電話が鳴り止まない

ケータイに目を遣ると通知ランプが真っ赤に点滅する。不在着信の知らせです。

電話というものは人の都合を一切斟酌せず状況を切り裂いていくので、私は基本的に好みません。特に留守番電話の意味の無さについては憎しみすら感じています。だって、留守番電話で意義のあるメッセージが残っていたことありますか?「山田でーす。また電話しまーす」このレベルのメッセージしか、私には残されていた試しがない。むしろ、意義のある超重要メッセージを留守番電話に残されて伝えたことにされても困る。したがって、私は数年前よりケータイの留守番電話設定を解除し、メッセージを残せない仕組みにしています。数年経ちますが、何の問題も生じていません。ざまーみろ留守番電話め!

話が逸れました。ケータイを確認すると見慣れない電話番号から何度も何度も着信が残っています。誰だろう、と首を傾げていたまさにその時、再びコール。思い切って通話ボタンを押す。

「○○のシェフ、○○ですが」一瞬、脳内がハテナで埋め尽くされましたが、特徴的な語り口に記憶の網が引っかかる。わお!懐かしい!『「お代は結構ですから悪く書かないで下さい」とシェフに懇願された話』の人だ!ってか短時間に何回も電話し過ぎだから。彼氏か俺は。

開口一番「私の店を記事にしないって約束してくれたじゃないですか!なのになぜ記事にするんです!?」とどやしつけられる。安心して下さい、あなたの店を記事にした覚えは全くありません、と答えると、「『「お代は結構ですから悪く書かないで下さい」とシェフに懇願された話』という記事、読みましたよ!」と既にいらたん。短気な愛読者である。

あの記事はあなたの店の記事ではない。こちらも気を使ってあなたの店だと絶対にわからないように書いている。例の記事を読んであなたの店だとわかる人は絶対にいない、と丁寧に返す。

なんでも、例の事件は彼も相当に大噴火レジェントサイクロンフレアァァッだったらしく、料理人仲間何人かに相談したとのこと。自分で広めとるがな。

その料理人仲間のうちの1人から「たぶんお前のことが書かれているよ」という連絡があり確認したところ、憤怒バーニングファッキンストリーム状態となり、今回の電凸に至ったとのこと。ちなみにその『仲間のうちの1人』とは○○駅近くのとあるビル内でフレンチやらイタリアンやらの料理を出すシェフとのこと。情報元の秘匿ちゃんとしましょうね。

また、私と彼がした『約束』の内容に齟齬があったようです。私は「店のことを記事にするな」と言われただけだったので、店や料理について触れず特定できないようにすれば、単なる私の日記に過ぎないので無問題と思っていました。

一方、彼がした『約束』は、「今後二度と俺に嫌な思いをさせるな」という意味だったらしいです。ネロ帝か。

「男らしくないですよ!」と真っ向からディスられました。甘い。私は女子力の高さをウリにしているユニセックスおじさんなのである。

「脚色して書かないで下さい!」これはちょっと意味わからんちん。脚色なんか全然してないし。念のため同行者に例の記事を読んでもらい、脚色があるかと訊ねると「事実に忠実」という回答でした。やれやれ。

「どうしてあんな記事を書くんですか?」と本質的な質問。私も真面目に、料理人やサービスがあの記事を読んで襟を正してくれればいい、などと最もらしいことを述べてみました。実際にあの記事は反響が非常に大きく、客側だけでなく飲食に携わる方からも好意的な感想を沢山頂きました。もちろん否定的な意見も頂戴したのですが、問題提起としてはまあ悪くなかったかなあと結論づけています。

「否定的なことじゃなく、人が喜ぶことを書いたらいいじゃないですか。ペンを取るとはそうことだと思う」村上春樹かよ。まあそれは人それぞれの考え。是非はともかく、週間文春にも需要はある。

「あなたは自分の仕事を悪く言われたら、どんな気分になります?」何とも思いません。これは強がりでも何でもなく、心から何とも思いません。ああ、あの人とは価値観が違ったんだな、と思うだけ。それでも他に私を必要とする人は沢山いるから気にも留めない。

まあこれは、質問をする相手が悪かったですね。私は死ぬこと以外かすり傷と思っているタイプであり、見ず知らずの他人に誹謗中傷されようとも、気分が悪くなるどころか「炎上しておいしい」とさえ思ってしまう人種なのである。

「そんな風に割り切って考えられる料理人はいません!料理は自分の人生であり子供のようなものだ!それを否定されるのは許せない!料理人は皆そう考えている!」『料理人は皆』は言い過ぎでしょう。どうも彼は物事を思い込みで決め付けるきらいがあります。現に私の友人の料理人はネット上の評判など意に介さない。芸術ってそういうもんじゃないのかなあ。

「とにかく!あなたの記事によって、私は嫌な思いをしたんです!それはきっちりと受け止めて下さい!言いたいことは言ったんで、もういいです!それでは!」ちょっちょっちょい待ち!どんだけフリーダムやねん。せっかくの機会なんだから私からも質問させてください。

もっとドーンと大きく構えたらいかがです?あなたのお店は連日満員で、キャンセル待ちは半年以上。固定客だって山ほどいる。料理のできない素人が仮想世界で何かつぶやいている、ぐらいで放っておけばいいじゃないですか。あの記事があなたのビジネスに悪影響を与えることは無いんですから。

「お店が満員だとか、ビジネスへの影響の有無を気にしているんじゃない!私が嫌な気分になるからやめろ、って言ってるんです!」ネロ帝よ、お言葉ですが、それは読まなければいいだけのことです。

続けて質問。私だって、あなたのお店にお邪魔した際、非常に嫌な思いをさせられました。そのことはきちんとご理解されていますか?私は静かに食事を楽しんでいただけなのに、あなたは唐突に我々のテーブルに闖入し、がなり立てました。ああいうのは、料理人ひいては飲食店としてどうかと思いますよ。

「お客様は神様だ、だなんて、こっちは思ってないですよ!」もー、どーしてそーいう極端な話になーるのーかなー。そーんなこと、こっちはヒトコトもー言ってないしー。妄想の羽を広げすぎ。

さらに、本題からは大きく外れますが、是非訊ねてみたかった質問を投げつける。あなたは、ある有名なレストランで修行したことをウリにしていますが、たった数ヶ月、研修生として居ただけですよね?それを『修行した』とか『薫陶を受けた』のように誇大広告することこそ『脚色』だと思いますが。

「あれは雑誌が勝手に書いたことだ!」うーん、その回答は頂けないなあ。ショーンKはハーバードビジネススクールでMBA取得と宣伝しておきながら、実際はオープンキャンパスの授業を取ったのみだった、ということが問題視されました。経歴詐称と言うと語感が強いですが、私からするとこのシェフの手口は似たようなもんです。

私はニコライ・バーグマンの1日体験フラワーアレンジメント教室に参加したことがあるのですが、『ニコライ・バーグマンに師事しました』って言ってみようかな。いいや止めとこうバカっぽい。

自ら語らない限り雑誌が勝手に書くことは無いと思いますよ、と粘り強く質問を続ける。それに「勝手に書かれた」のであれば、今回みたいに訂正を求めるべきでは?

一呼吸の後、シェフはゆっくりと語り口を開きました。

「実は、お店の立上時は不安しか無くて、どうなるかわからないから、そういうネタで客を釣るしか仕方がなかったんです。そう、仕方なかった。ああいうやり方をしないと、私の店は誰にも知られることなく潰れていたかもしれない。そう、あれは仕方がなかったことなんだ。でも、店が軌道にのった今は、インタビュー時に過去の経歴について触れないようにしています!」なんて正直な料理人なのでしょう。まるでジャン・バルジャンの独白を聞いているようで、爽快感すら覚えました。

それなのに「でもねっ!あなたの記事は…」と、話がまた振り出しに戻りそうだったのでいい加減ウンザリ。シェフのお気持ちはわかりました~、と、3ヶ月前と同じ台詞を述べて会話を打ち切りお疲れちゃん。通話時間20分。彼氏か俺は。

恐らく彼は、目の前の案件に脊髄反射で猪突猛進する直情径行タイプなんでしょう。「今、店の中でキレたら周りのお客様まで巻き添えにしてしまう」「今、経歴詐称したら後々ほころびが出る」のような思慮を一切携行しない短期決戦制圧型。私とは芸風が全く異なります。

君子危うきに近寄らず。彼のケータイ番号を丹精込めて電話帳に登録し、注意深く着信拒否設定としました。

念のため顧問弁護士に相談すると「貴方の行為は全く問題ない。むしろ、来店時の予約電話番号を引っ張り出してきて3ヵ月後に電話をかける行動こそ異常。私が弁護士の名を出して正式に抗議しましょうか?」と穏やかでない。ひとまず今回は遠慮しておき、今後もしつこく彼女面した際にはお願いしたいと思います。

翌朝、目を覚ますと通知ランプがピカピカと緑色に点滅。これはLINEからの通知。誰からのメッセージだろう、とアプリを立ち上げると 心臓が一瞬だけ止まりました。「新しい友達」に彼の名が登場し、ご丁寧に「新しい友達とトークしよう!」とまで提案されました。LINEの野郎、人の気も知らないで。

なるほど、着信拒否のために電話登録すると、LINEに連携されるのね。天を仰いでほとんど苦痛に近い表情を浮かべ、これだからスマートフォンは難しい、とひとりごつ。


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当記事の店は極端ですが、私が全く評価できないお店の共通点は「客のことを考えていない」です。想像力が欠落しており、料理やハコ、器を押し付けて来る。酷かったお店をまとめました。

「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。


香港vol.3~初ロブションは二十歳の女たち~

8時間ぶっ通しで眠りこけました。
窓の外に目をやると、どこまでも晴れ渡った青空と攻殻機動隊的な近未来の街並み。ついついテラスの外に出ると、一瞬でメガネが曇り、汗が噴き出してくる。1分と我慢できず室内に戻りました。
さてブランチ。ローカルばかりで観光客には肩身が狭い飲茶店で非日常を体験。今回の旅行で一番のお気に入りのお店です。詳細は別記事にて。
腹が膨れた後はレジャー。香港ディズニーランドです。香港にしか無いエリアならびにアトラクションなどもあり、思いのほか楽しめました。詳細は別記事にて。
ディズニーを夕方で切り上げ、九龍半島の無秩序な街並みを散歩。「ワインショップを覗いてみたい!」との希望はさすがの職業病。「香港のワインは割高」と事前に聞かされてはいたのですが、確かに滅茶苦茶な価格設定でした。価格もさることながら、保存状態が全く信用できません。日当たりの良い30度を超える店内に野ざらしで置いているんだもん。
昨日のマンゴー系のスイーツに満足できなかったため、リベンジでマンゴー系のスイーツを。詳細は別記事にて。
夕食は70年の老舗ながらお家騒動により閉店が噂されるローストグースの名店へ。詳細は別記事にて。

そうそう、食事の最中やディズニーの待ち時間での他愛も無い会話が楽しかったです。彼女たちはベビーフェイスの20代と見せかけておいて、初ロブションは二十歳などという、飲食経験が恐ろしく豊富。会話の端々でギョっとする慧眼を垣間見ることができます。飲食のプロとレストラン談義に華を咲かせるのはいつだって楽しい。

印象的だったのは合コンの店選びと支払額についての議論。合コンにおいて、「(1)女の子は無料だがショボい店」「(2)女の子は支払額5,000円でイケてる店」のいずれが好印象かを訊ねると、ふたりとも即答で「(2)。支払額がいくらになろうとも、店選びのセンスをすごく見る」とのことでした。

もちろんこの回答を全ての女性に演繹するつもりはなく、むしろ彼女たちは大江戸線ほどの深さの地下鉄駅で「あたしちょっと階段で昇りますわ」と言い残して駆け出すという奇行に及ぶ類の女性でもあるので、男性陣にとっての正解は永遠の謎ではありますが、まあ、彼女たちを紹介して欲しい方がいればご連絡ください。
帰国の途につく。空港でスイカの残額を払い戻すのを忘れずに。
我々のバニラエアの中国語表記は「香草航空」でした。なんか笑っちゃう。

ちなみに、成田にあった自動チェックイン機は当空港には存在せず、預け入れ荷物の無い我々も長蛇の列に並ぶ必要がありました。余裕をもって3時間前に空港に到着していたのに、なんだかんだと列に並ぶことを求められ、ちっともゆっくりできませんでした。LCCの悲哀ここに極まれり。
また、香草航空の本拠地である第2ターミナルにはラウンジがなく、深夜ではセブンイレブンぐらいしか開いていません。てっきりシャワーぐらい浴びれるものだと思っていたのになあ。仕方なしにトイレの個室で真っ裸になり、ウェットティッシュで身体を拭きまくる。彼女たちのもとに戻り、やあみんな僕は今最高に清潔だよと伝えると「そういうホームレスいますよね」とのコメント。「それから、傷つくと思ってずっと黙ってたけど、成田で会った時は本当に酒臭かった。酷かったんだから」なぜ今になってそれを言う。

以上で美女ふたりとの香港珍道中はおしまい。土曜の朝に日本を発ち、月曜日の早朝に戻ってくる。少しだけ身体に無理をさせれば一生の思い出に残る週末を創り出すことができます。時間の使い方はまこと千差万別。寝てるだけの週末なんて、もう流行りませんよ。

それから、香港は良い街だなあと再認識。多種多様な人種がごくごく自然に交じり合って生活。欧米的な楽しみ方もあれば、アジアな生活も手が届く。コスモポリタンの最先端の先端ですね。香港であれば外人である私も違和感無く暮らせそうな気がしました。百年後の世界は人種と国籍のボーダーレス化が一層進み、世界中の都市が香港みたいになるかもしれませんね。

今回の香港旅行を時系列にまとめました。下から上に向かってます。

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