ワインをめぐる冒険 vol.11~スタッガード配列~

おまけです。
これまでパリに訪れる際は成田便の777だったのですが、今回は羽田便で787-9、すなわち人生初のスタッガード配列でした。
座席そのものを切り取ると意外と地味。ただし占有面積については通常配列の倍あるので、持て余すほどの広さがあります。
マットレスと掛け布団。フルフラットにした際にマットレスを敷いて、布団をかぶってごろりんちょ。
私の長い長い足であっても余裕の奥行き。
コントローラーとヘッドフォンは他と同じですね。座席の位置調整は意外にシンプル。
アメニティはロクシタン。リップクリームとハンドクリームがロングフライトに優しい。

しかし何よりも気に入ったのは機内の静けさ。1-2-1という配列で1は当然に静かであり、2についても幅が広く壁もあるため会話が成り立たず、結果として静寂が訪れるのです。

私は街中の騒音に関しては無頓着なのですが、公共の静かにすべき場において騒いでいる輩にイライラしてしまうタチなので、この環境は非常に心地よく感じました。
身を落ち着けてくつろぎ始めると即座に供されるウェルカムシャンパーニュ。モロ日本人のCAに英語で話しかけられるのはご愛嬌。のはずなのですが、別のCAにもまたまた英語で話しかけられ茫然自失。確かに若干コスモポリタンの気がある風貌なのかもしれませんが、さすがに2連チャンだと純血の日本人として色々と心配になりました。
WiFiが無料。回線は細いけれども通常使用であれば問題ありません。
私個人の機器に「アナウンス中」を表示するテクノロジーの仕組みはどうなっているんでしょう。
食前酒には再びシャンパーニュ。上空で飲むと気泡が大きくなって美味しくないと教わりましたが、確かにそんな気がします。

ちなみに、記憶力に優れた読者なら覚えていらっしゃるかもしれませんが、ANAには私と実に癒着したCAがおり、フライトのたびに裏情報を横流ししてくれていたのです。

しかし彼女は先日、飛び切りの好青年と結婚し寿退社。披露宴にご招待頂き、それはそれは感動的な会でした。同僚の寿アナウンスに破顔し、ご友人のプロヴァイオリニストによるアナザースカイでは涙がこぼれそうに。

ちなみに私は最前列新婦同僚テーブルに独り放り込まれながらも、謎のコミュ力を発揮し、さらなる癒着の輪を広げたのは言うまでもありません。
さて、アミューズ。エビにトマトにチーズにラタトゥユ?空の上としては上々です。
続いて白。今回の旅はズバリなシャルドネを飲む機会がなかったので気に入りました。
前菜は完全に手抜きでガッカリ。生ハム単品では美味しいのですがこのプレゼンテーションはいかがなものか。
丸いパンは凡庸でしたが棒状のパンは星付きレストランで供されるものと同等に旨い。
ボルドーの赤。聞いたことのないシャトーですが平常心を失うほど美味しかった。正直に申し上げると、今回の旅行で一番美味しいかもしれない。上空であるため味覚に異常をきたしていたのかもしれませんが、とにかく美味しかった。東京に帰ったら買おうっと。
メインは牛フィレ肉。長くフランスに滞在し洋食を食べ飽きているはずなのに、あえて洋食を選ぶあたり漢である。
断面は見事なピンク色。これ、どういう仕組みなんででしょう?陸上でごくごくレアに調理しておき、機上でリヒートしたらこんな具合になるの?味わいもパリやボルドーのビストロに比べると気品が感じられ、機内食という下駄を差し引いても素晴らしい料理です。
こちらは良くも悪くも南仏らしく、美味しいのですが特筆すべき点はありません。
シャウルスとコンテ。なんとなくロゼをお願いすると「スミマセンもう切れてしまいました」とのこと。嘘つけ周りで誰も飲んでへんやんけ。しかしここで彼女たちを敵に回しても詮無きことなので、穏やかにコチラ。
明々白々なアルザス。ああ、でもやっぱロゼ飲みたかったなあ。
デセールはフォンダンショコラ。特濃。霧笛楼のブラウニーを凝縮した具合。つまり美味しいのである。
コーヒーで〆てご馳走様でした!
と思いきや、まだまだお腹が空いていたので、追加で一風堂の味噌ラーメン。機内で私ひとりだけのんびりと3時間近くかけて食事を楽しんでおり、お休み用に照明はすっかり落とされているため、うまく写真が撮れませんでした。味はイマイチ。これまで通りのトンコツでよかったのにな。
朝食は和食。どうってことない定食です松屋レベル。
満足できなかったので腹いせに九条ネギうどんをお願い。なんですが、こちらもペケ。ネギが保存がきくように乾燥させており、パサパサのモソモソで正直言ってまずかった。

それにしても機内WiFiサービスは良いですな。メールの確認やレストランの予約、その他事務処理などなど、帰国後の疲れた身体でやるにはうんざりする作業を移動しながら遂行できる。ブログも記憶がフレッシュなうちに書くことができるしね。今あなたが読んでいるこの記事はロシア上空で執筆しているのですよ。

「ワインをめぐる冒険」シリーズ目次

このシリーズは間違いなく名著。一般的なガイドブックと全く観点が異なり、完璧にワインラヴァーを向いています。ワインがテーマのフランス旅行においては必携!


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ワインをめぐる冒険 vol.10~20歳の春に一目惚れした貴方は何処へ~

チェックアウトぎりぎりまで部屋でくつろぎ、完全に疲労回復。最終日にして体力全快。
シャンパーニュの気温は7月下旬にして14℃。半袖姿の私には堪える寒さ。東京の37℃とか体温より高いじゃん抱き合ったほうが涼しいんとちゃうか。
今回のTGVも1等。座席が広くポケットやテーブルの位置も快適で、これまでのTGVで最もお気に入りの車両でした。日本の新幹線はどこも似たようなものですが、TGVは車両によって席の快適度合いが大きく異なります。
パリに着いて早速ランチ。買ったばかりのミシュランを午前中に読み込み、アクセスの良いビブグルマン(リーズナブルでそこそこ美味しい店)にあたりをつけ、ネットから予約しておくという行動力。東京では見ることのない、そして東京に進出したらヒットしそうなレストランで大変気に入りました。

フライトまで6時間ほど余裕があったので、パリ観光に繰り出す。実は私、モンサンミッシェルと同様に、モンマルトルも行ったことがなかったのです。
この写真は初めてパリに降り立った20歳の春のもの。当時のモンマルトルは、道行く人の半分は殺人鬼でもう半分は強盗犯だったので、魅力的ではあるものの絶対に近づいてはならないゾーンだったのです。

なのですが、ここ数日のパリ界隈の観光客の多さ並びに脇の甘さを勘案すると、私が悪人であれば私を狙わずもっと隙のあるバカを狙うと確信し、ついにモンマルトルの門戸を叩くこととなったのです。
駅に降り立ってすぐにある愛の壁。複数言語でGreeeeeeeenも真っ青の愛の唄が奏でられています。
テルトル広場。似顔絵描きがたむろっていますが腕は中分であり見るべきものはありません。
サクレ・クール。パリにある他の寺院とは異なった雰囲気で面白い。
内部は厳粛な雰囲気で私語厳禁なのですが、アジア人観光客がくっちゃべっていてすげえ怒られてました。
当寺院から望むパリの全景には息を呑む。
芝生には市民と観光客が綯い交ぜに平和を紡ぎ出しています。
お次は凱旋門。上には登らず遠景ならびに股をくぐるのみ。ここには何とも甘酸っぱい記憶があるのです。

再び時を遡って20歳の春。虚言癖のある面倒な恋人と首尾よく別れることができ、浮かれ気分の私はヨーロッパ一人旅を満喫しておりました(虚言ちゃんよ、あなたが私のことを忘れられなかったことを私は忘れないよ)。

ひとりで凱旋門の上に立ちパリ市内を眺め、遠くに来たものだと物思いに耽っていたところ、呼吸を忘れるほどの美女を視界の端に捉えたのです。

彼女は世の不幸を一身に背負ったような表情を浮かべており、長く見惚れていた私と視線が交錯するのは時間の問題。不確かな笑顔とともに彼女は身の上を語り始め、要約すると「青学4年でもーすぐ卒業なんだけど就職決まってなくて現実逃避のためにパリに留学中のカレシの家に転がり込んできた」。

うん、今日はここまでにしておきましょう。ともあれ、彼女は幸せになっているだろうか。あの人は今。情報求む。
使い捨てカメラ全盛の時代、すなわちシャッターの1枚1枚に重みがありフィルムの無駄使いは許されないご時世にこの自撮り力。エッフェル塔まで完璧にフレームにおさめるあたり、我ながらあっぱれである。
ちなみに、凱旋門の足は2本でなく4本だということが意外にも知られていないのでここに記しておく。
パリ日本文化会館。たまたま通りがかったところ入場無料であったため、好奇心の赴くままにお邪魔します。しかしそこには私の知る日本は1ミリも存在しませんでした。お手洗いが清潔だったことが救い。この近辺でもよおした際には皆さんここにお立ち寄り下さい。
違法の路上販売者たち。昔はミサンガを腕に巻きつけてきて法外な金額を請求したり、偽ブランドバッグやサングラスを売りつけたりする連中が多かったのですが、最近は自撮棒。時代を感じます。
エッフェル塔。なんとも高踏的で説得力のある佇まい。私は大阪出身の田舎者なので、東京タワーが都会の象徴として信じ込んでいるのですが、いやはやエッフェル塔もかっこいいじゃないですか。
どこまでも広がる芝の海と青い空。みんなで楽しく甲羅干し。パリの豊かさはここにある。ミクロでは課題が多いけれどもマクロに接すれば世界有数の様式美。ナチスドイツの侵攻に際し、街の美しさを護るために無防備都市を宣言した勇気。そうした決断があってこその今。

ふと周りを見渡すと、芝生に身体を横たえながら特に何をするでもなくエッフェル塔の空をぼんやり眺めている観光客が大勢。私と同じようにこの街の美しさと歴史へ畏敬の念を抱いているかと思うと、この街の豊かさが心に染み入ります。

私はパリひいてはフランスに対して何の貢献もしておらず、刹那的にその豊かさだけを掻い摘んで良いとこ取りをしていることにはただただ恐縮。それでも歴史への感謝は人一倍大きいので、少しでもこの感動がみんなに伝わるといいな。

ド定番な観光地巡りをしておきながらこのような意識が芽生えるのは何だか可笑しい話ですが、これからも東の果てから花の都を大切に思い続けていきたいと思います。また来るぜ。

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Pascade/オペラ

夜には機上の人となるのであまりウロウロしたくない。そのため1区か2区あたりのビブグルマン(リーズナブルでそこそこ美味しい店)を、買ったばかりのミシュランガイドで探すと2軒が該当。ただし1軒は土日休日のため、消去法で当店を選択。
公式ウェブサイトを確認すると、ネットから予約できて大助かり。日本に比べて海外はネット予約が進んでいて大好き。東京のレストランも、もっとOpenTableに参加すればいいのに。気軽に予約されて気楽にドタキャンされるのが嫌なら、海外みたいにクレジットカードのデポジット方式を採用すればよろしい。
さぞや人気だろうと思いきや、意外と空席が目立つ。
アミューズのプチトマトが手抜きながらもきちんと美味しい。
フランス人を見習い本日もロゼを頂くことにしました。辛口で美味しゅうございます。日本で飲むロゼは甘く中途半端なものが多い気がする。もっと辛口が普及すればいいのにな。
パンはカンパーニュのみでしたが適度な酸味としっかりとした穀物の味が滲みていて、この価格帯のレストランとしては素晴らしい。
ガスパチョはトマトをクリームで溶いており、サラミの角切りでコクと食感を楽しめるように仕立てられていて格別でした。上品な器に盛れば星付きレストランの味と同等かそれ以上。
サラダはただのレタス盛りです。どシンプルではあるものの、品質は高く、生野菜が不足しがちな旅行にはうってつけの一品。
お待ちかね、スペシャリテのPascadeです。パイ生地とタルト生地の中間の食感。表面はハチミツを軽く塗ってあるのか甘みが感じられます。具はマッシュルームの味が溶け込んだクリームに、豚バラ薄切りと見紛うが臭みをまるで感じさせない牛肉。ん?牛肉?私はエビを注文したはず。店員に相談したところ、
じゃじゃーん、新品のエビでーす。意地汚いかもしれませんが、牛バージョンを3分の1ほど食べ進めていただけに、ずいぶんと得した気分である。

が、このエビバージョン、香辛料をきかせたオリエンタルで多彩な味わいではあるものの、ペンネがグズグズであり全体としてのまとまりがない。正直、牛のほうがうまかった。『店員の誤りを指摘し交換を求めると更にマズくなった』をタケマーフィーの法則に加えることとしましょう。
デザートのPetit-Pascade。Pascadeを直径5センチ程に縮めたミニチュアサイズ。味はチョコレート、チェリー、コーヒー、アプリコットの4種。チョコレートはとろっとろ状態。チョコレートフォンデュをひっくり返したような味わいで大満足。チェリー、コーヒー、アプリコットは常温であり手の込んだミニャルディーズといった様相。いずれにせよ、この価格帯でここまで手の混んだデセールを提供するのは賞賛に値します。

パリのど真ん中にしては頑張っているお店だと感じました。このあたりには玉石混淆のレストランがひしめき合っており、というか8割方は石なんですが、ここは玉。パリに旅行に来て、あまり都心から出歩きたくなくて、かといってそれほどお金も使いたくないというワガママボディには心からオススメできるお店です。東京に進出したら面白い展開になると思うのだけれど。



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